おまけ


翌日。流石に一斉送信してしまった場所でデートする気にはなれず、二人は万事屋で会うことにした。
銀時からのメール―事故で送られたものだが―で今日のデートのことを知った子ども達は、
二人に気を遣って朝から出かけていた。

けれど万事屋へ向かう途中で土方はマドマーゼル西郷に呼び止められ、開店前のかまっ娘倶楽部へ
連れて行かれてしまう。

「アンタね?パー子の恋人ってのは…」
「パー子?…ああ、万事屋か。」
「そう。今日はデートなんでしょ?」
「アンタもメール見た一人か…」

土方の表情は特に変わらない。
実は昨日から幾度となく、銀時の知り合いを名乗る人物から声を掛けられていて、
いちいち恥ずかしがったり激昂したりするのが億劫になってきていた。

「無駄なメールを受信させて悪かったな。…アイツにゃよく言っとくからよ。」
「気にすることないわ。誰だって間違うことはあるわよ。」
「そりゃどうも…」
「それより…メールに書いてあったことって本当なの?」
「違う。」

一斉送信されたのは銀時が送ったメールのみであるため、それを否定した土方のメールは銀時にしか
届いていない。ゆえに、土方が銀時に強く想いを寄せているようにも取られてしまうのだ。
それすら否定するのも面倒だと感じる程に、大勢から話し掛けられていた土方であったが、
こうして聞かれれば、やはり否定しておかないと気が済まない。

「全てアイツの妄想だ。」
「やっぱりそうよねぇ…」
「分かってくれるのか!?」

これまで土方が出会ってきたのは皆、銀時のメールを信じ切っている者達ばかりであった。
漸く分かりあえる人物に出会えたと土方は目頭が熱くなるのを感じた。

「もしかして、他の人達には信じてもらえなかったの?」
「ああ…」
「そうだったの…。まあ、私には分かるわよ。パー子とは、ある意味同志だものね。」
「…同志?」
「確かに、パー子は私のように普段から女として生活してるわけじゃないわ。」
「はあ…」

西郷が「女」として生活できているかどうかは、この際問題にしないことにする。

「だからこそパー子は、抱かれることが恥ずかしいことだと思っているのよ。」
「…抱かれる?」
「あっ、別にアンタのことが嫌なわけじゃないのよ?ただ…私から見ると、男のプライドみたいな
下らないものをまだ捨てきれていない気がして…」
「………」
「それで、ああいう発言をしちゃうんだと思うの。そんな時は、いつもより優しくしてあげてね。」
「いや、その…」

この勘違いを正すべきか否か、土方は迷っていた。
西郷が「パー子」の心境として語ったことはまさに、土方が常日頃から直面していることであった。
銀時を抱きたいとは思わない。けれど男として、抱かれることを享受し続けていていいのだろうか…。

「…どうしたの?」
「あ、いや…別に。」
「何か言いたいことがあるんでしょ?遠慮しないで言ってごらんなさい。」
「その…」

土方はそもそも、こういった話を他人とすること自体に抵抗がある。
けれど西郷は少なくとも「パー子」の気持ちとしては理解してくれているようだ。
自分が悩んでいることはともかく、事実だけでも訂正しておこうと考えた。

「万事屋は…抱かれる方じゃねぇよ。」
「…えっ?」
「俺が……そっちだ。」
「そうなの!?あらやだ、私ったらてっきりパー子が『ネコ』なんだと…ごめんなさいね。」
「別に…」
「それでパー子ったら、いくら誘ってもこっち側に来なかったのね…」
「俺も、女になる気はねぇよ。」
「勿体ないわ〜。アンタ、パー子と違って髪サラサラだし、伸ばしたら美人になるわよー。」
「だから俺はっ…」
「分かってる。…でも、気が向いたらいつでも連絡して。はい、これ私の名刺。」
「ちょっ…」
「デート前に引き留めちゃって悪かったわね。…パー子に優しくしてもらうのよ〜。」
「おいっ!」

これ以上は否定させてもらえず、土方は西郷の名刺をもらってかまっ娘倶楽部を出されてしまった。


今まで、銀時の交友関係の広さを内心で羨ましいと思っていた。
けれど今回のことがあって土方は、身の丈に合った範囲があるのだと気付かされたのであった。


(11.05.27)


銀さんは逆CPでも攻めっぽいことが多いので、たまには受けっぽい攻めにしてみたかったんです。原作の「チンコいった」発言が、すんなり受け入れられてるってことは

九ちゃんや西郷ママには、そう見えているのかなと…。オカマと受けは全然違いますけどね^^;

リクエストは「できれば18禁で」と締めくくられていたのですが「できれば」の言葉に甘えて、18禁でなくしてしまいました。リクエスト下さったみぃ様、申し訳ありません。

メロ妄想まで楽しみにして下さっているとのこと、本当にありがとうございます!そして、ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました。

 

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