後編


異界から来た少女二人は当面の間、万事屋で生活することに決まった。
そのため、かまっ娘倶楽部の仕事はキャンセルしてもらい、銀時達は四人で万事屋へ向かった。
道すがら、銀時が少女達に問う。

「なあ…お前ら、カップルなんだろ?」
「はぁ!?ななななに言ってんの!?バカじゃない、アンタ。」
「…私達、ただの友達ですけど…」
「あれっ?そうなの?…土方、ちょっと。」
「ん?」

彼女達に聞こえないよう、銀時が土方に耳打ちする。

「俺達の関係、あの子達に言わない方がいいと思う?」
「当たり前だ。自分と友達に似たヤツらがデキてるなんて、いい気がしないだろ…」
「今までの経験からして、アイツらもデキてると思ったんだけどなァ…」
「アイツらと俺達は別モンってことだろ。」
「まあ、そうなんだけどね…」

一方で彼女達もこそこそと話をしていた。

「ねえトシ子…この世界って、女同士のカップルが多いのかしら?」
「さあ…。だとしたら、変な世界よね。」
「そっ、そうよね!アタシ達、友達なのにねっ。」
「そうね…」
「…トシ子?」

何かスッキリしない思いを抱えながら、彼女達は万事屋へ到着した。



「知らない土地にいきなり飛ばされて疲れただろ?今日はもう、フロ入って寝ろよ。」
「あっ、はい…」
「どうも。」

銀時にバスタオルを渡され、二人は浴室に案内された。


*  *  *  *  *


「あの…ありがとうございました。着替えまで、貸していただいて…」

浴室から出てきた二人は淡い色の浴衣を着ていた。新八が泊まる時用にと置いてあるものである。

「いいってことよ。それ、ウチの従業員のもんだけどちゃんと洗濯してあるからな。」
「アンタ、従業員なんて雇える立場なの?」
「そう!俺はこのかぶき町で最も有名な大企業の社長だからなっ!」
「…オカマが社長やってりゃ、有名にもなるでしょうね。」
「あの格好は今日、偶々手伝いに呼ばれただけで、普段の俺はこのとーり、カッコイイお兄さんだから。」
「…オジサンでしょ。」
「本っ当にお前は可愛くねーな…。ねー、トシ子ちゃ…えぇっ!?」

銀時が救いを求めた十四子は、マヨネーズボトルを両手で持ち、直接口を付けて啜っていた。
十四子は一気にマヨネーズを飲み干すと、満面の笑みを土方に向ける。

「ありがとうございます。土方さん!」
「いいってことよ。…やっぱり風呂上がりには冷えたマヨネーズだよな。」
「そうですよね!…あっ、すみません…」

十四子の瞳からはらはらと涙が零れ落ちる。

「今まで、誰にも分かってもらえなかったから、嬉しくて…」
「分かるぞ、その気持ち!辛いだろうが、マヨネーズを信じて共に頑張ろう!」
「はい!土方さん…私、頑張ります!」
「………」
「………」

外野からは何をどう頑張るのかサッパリ分からなかったが、マヨラー二人はすっかり意気投合し、
マヨネーズ談議に花を咲かせていた。
銀子はその様子を寂しげな様子で見詰めており、それに気付いた銀時がボソッと言った。

「プリン…食うか?」
「!?」

瞬間、銀子の目が煌めいた。

「食べる!いや〜、アンタいい人ね!流石カッコイイお兄さんは違うわねっ!」
「ゲンキンなヤツ…」

そう言いながらも銀時の表情は穏やかで、冷蔵庫に入れておいたプリンを出して銀子に渡した。


*  *  *  *  *


「お布団まで使わせていただいてすみません。」

銀時と土方で和室に布団を敷き、そこが彼女達の寝床となった。

「若い娘さんをイスで寝かせるわけにはいかねーだろ。」
「…そういう発想がオッサン臭いのよ。」
「あ?」
「何よ。」
「パー子、お世話になるんだからやめなさいよ。」
「はいはい。ところで…土方さんもここに住んでるんですか?」
「…あっ、いや…俺はもう帰「土方くんは俺の親友でー、こうしてたまに泊まりに来ては酒を酌み交わし
友情について熱く語り合う仲なんだよ。なっ、土方くん?」
「そ、そうだね、坂田くん。」
「だったら邪魔しちゃ悪いわね。トシ子、寝ましょう。」
「そうね。おやすみなさい。」
「はいはーい。おやすみ〜。」

和室の襖が閉まると同時に、土方は銀時の足の甲を思い切り踏み付けた。

「痛っ!何すんだよ〜…」
「誰が親友だ…。白々しいこと言いやがって。」
「じゃあ何て言えば良かった?いつもの癖で泊まる気満々だった土方クン?」
「だっだから、帰ろうとしたじゃねーか…」
「自宅さながらに冷蔵庫開けてマヨ出して、あの娘達の布団もシーツもテキパキ準備してさァ…
今更、『単なる顔見知り』は無理あると思わない?」
「うっ…」
「それよりもさァ…こうして会うの、一ヶ月ぶりだよね?」

銀時は土方を抱き寄せる。

「お、おい、向こうに…」
「大丈〜夫。お嬢さん方は疲れて眠ってるよ。」
「やめっ…んんっ!」

土方の後頭部を押さえ付け、半ば強引に唇を合わせる。
確りと抱き締めて唇を舌で辿るうち、土方の抵抗が弱まっていった。

「ハァッ…」
「…その気になってくれた?」
「これ以上は…」
「分かってるって。…ホテル行く?」
「………」

土方は悔しそうな表情で頷いた。

「念のため書置き残しとくか…。えっと…親友の土方くんと飲みに行ってきます。」
「おい…」
「どーせ朝までぐっすりだって。…早く行こうぜ?」
「ったく…」

銀時に手を引かれ、二人は外へ出て行った。

その頃の和室。

「…行った?」
「多分…玄関でカチャカチャ聞こえたから。」

一部始終を目撃してしまった少女達が、少しだけ開いた襖を閉め直していた。
最初に口を開いたのは銀子であった。

「ビックリした…。二人がケンカしてると思って見たら…ねえ?」
「ええ。土方さんと銀さん…キス、してたわね。」
「やっぱりこの世界って、そういう所なのかしら?」
「そう、なのかもね…」
「いいなぁ…」
「…パー子?」
「あっ、ちち違うのよ!そういう意味じゃなくて…恋人がいるのは、いいことだからっ…だから、その…」

思わず漏れてしまった本音を銀子は慌てて覆い隠そうとする。
けれどその途中で虚しさが込み上げてきた。

(このまま…アタシの気持ちを隠して『親友』やってても、意味ないじゃない…。)
「パー子?どうしたの?」

急に黙って俯いてしまった銀子を十四子は心配そうに見詰める。
銀子は勢いよく顔を上げた。

「トシ子!」
「な、なに?」
「アタシ…トシ子のことが好き!」
「はぁ!?」
「ゴメンね。…中学の頃から好きだったの。本当はずっと言わないでトシ子の親友でいるつもりだった。
でも…あの二人見てたら、アタシがこういう気持ちの時点で『親友』にはなれないんだって気付いたの。」
「パー子…」
「…変なのは分かってる。分かってるんだけど………ゴメンね。」

言葉を発するたびに銀子の瞳から勢いが消え、涙が滲んでくる。

「泣かないでパー子。」
「ごめっ…だいじょぶ、だからっ…」
「違うの!私も…パー子のことが好きよ。」
「えっ…」
「ごめんなさい。ビックリして、言葉が出て来なくて…」
「う、そ…」
「私だって、信じられないわよ…」
「…トシ子〜!」
「きゃあああ…」
「えっ?わわっ…」

喜びのあまり銀子は十四子に飛び付き、十四子はバランスを崩して倒れた。



「いったぁ…」
「ごめんトシ子…大丈、夫?」
「ええ…。こ、こは…」

二人は見覚えのある街中にいた。そこはまさに二人が異世界へ飛ばされる前にいた場所。

「…戻ってきたのかしら?」
「そうよ!アタシ達、戻れたのよ!」
「「やったぁ〜!!」」

二人は抱き合って喜びを噛み締める。
そこへ、セーラ服姿の二人組が通りかかった。一人はオレンジ色の髪を左右にお団子で纏めていて
もう一人は長い黒髪をおさげに結い、メガネを掛けている。

「先輩達、なにやってるんですか?」
「朝っぱらからいちゃついてると遅刻するアルよ。」
「神楽!」
「パチ恵!」
「「会いたかったわ〜!」」

銀子は神楽に、十四子はパチ恵と呼ばれた少女にそれぞれ抱き付いた。
神楽は銀子の所属する茶道部の後輩で、パチ恵―志村八恵(はちえ)―は十四子の剣道部の後輩である。

「昨日も会ったアル…。銀ちゃん先輩、頭の中までくるくるパー子になったアルか?」
「神楽の毒舌、懐かしいわ…」
「土方先輩も…どうしちゃったんですか?」
「いいのいいの。」
「で、でも、その格好は…」
「えっ?」

十四子と銀子は万事屋で借りた浴衣姿のままであった。

「ぱ、パー子…」
「ウソっ!制服、アッチのまま?」
「制服ってこれアルか?」

神楽が二人の足元に落ちていたセーラー服を拾い上げる。その側に、二人の鞄もあった。

「良かった…」
「あったわ…」
「まさか…ここで着替えたんですか?」
「「違うわよ!」」
「アホな先輩に構ってるとこっちまで遅刻するアル。…パチ恵、行くアルよ。」
「待ってよ神楽ちゃん。…それじゃあ先輩、お先に。」
「え、ええ…」

神楽と八恵を見送り、二人は急いで近くの公衆トイレに入り制服に着替えた。


「パー子、急いで!」
「待ってよトシ子…。アタシ、文化系だから体力ないのよ…」
「全く…お茶菓子目当てで茶道部なんかに入るからよ。ほらっ!」

十四子は銀子の手を取り学校へ向かって走り出した。



アタシ、坂田銀子。銀魂女学園高等部の二年生。あだ名はパー子。
今、駅から学校に向かって走ってるとこ。そして、前にいるのがトシ子。
トシ子―土方十四子―は中等部から一緒で今も同じクラスで…恋人なの。
これからきっと色んな事があると思うけど、トシ子と一緒なら乗り越えていけるはずよ!


(11.04.28)


リクエスト下さった明夜様、女体化NGだったらすみません^^;「各々次元同士でハッピーエンドになるお話」ということでしたので、女の子組はデキてない設定に

しました。女子高生の二人はいつか書いてみたいと思っていたので、この機会に書けて楽しかったです。でもパラレル設定で一話完結って、前にも言いましたけど

難しいですね。他にも色々設定考えたのですが、それを全て入れると説明が多くなるし、かといって省き過ぎるとよく分からなくなるし…。

それから「銀土前提組があればリバ要素等が含まれていても可」だったので、珍しくリクでリバが書ける〜とわくわくしていたのですが、私が女体化エロに興味ないし、

ってことは攻受の区別ができるの原作設定のみだし…ってことで、結局リバは書けませんでした^^;リクエスト下さった明夜様、携帯で見られなくなったとのことでしたが、

これは読めていますでしょうか?私の知識不足で携帯には対応しきれていません。そんな中、リクエストありがとうございました。

そして、ここまでお読み下さった方々、ありがとうございます。前編の冒頭で書きましたが、この後「おまけ」で銀土R18文を付ける予定です。アップまで暫くお待ち下さい。

追記:おまけの銀土R18書きました。かなり温くなってしまいましたが…