※「生まれ変わっても・・・」の続きです。
※後編18禁で、リバ前提の銀土(金土)となります。








俺の名は坂田銀時。生まれ持った銀髪を金髪に染め、金時という源氏名でホストをしている。
自慢じゃねェがナンバーワンだ。今日は皆に、ナンバーワンホストの休日をちょっとだけ紹介しよう。



生まれ変わったら・・・



ホストの朝は遅い。太陽が昇りきる少し前に目覚めた俺は、カーテンを開けて朝日を浴びながら
軽く伸びをする。昨日も飲み過ぎてしまった……人気者の辛いところだ。勿論、店に来てくれた方々が
喜んでくれるなら二日酔いなんて……

「おい、起きたならさっさと来い。」
「オッケェ〜、我が命に変えても。」

今のは俺のハニーさ。最近付き合い始めた可愛いハニーは、こうして俺のために毎日食事を作りに
来てくれる。パジャマのまま寝室を出てリビングへ行くと、フリルの付いた淡いブルーのエプロンに
身を包んだハニーがテーブルに料理を並べていた。エプロンと同じ色のリボンで結われたポニーテールが
揺れている。エプロンの下は清潔感のある白いブラウスにラベンダー色のロングスカート。フリル……
いや、フレアだっけ?あの、くるって回るとふわって広がるスカート。
今日の朝食はクロワッサンとシーザーサラダ、ハムエッグにコーヒー。甘党の俺のためにミルクと砂糖を
たっぷり入れてくれている。そしてハニーは笑顔で『おはよう』と言ってサラダにドレッシングを……
ドレッ……ド…………

「ドレッシングだろ、ここはァァァ!!何マヨネーズかけようとしてんだよ!!」
「あ!?サラダにはマヨネーズに決まってんだろーが!!」
「それお前だけ!今朝はシーザーサラダなんだよ!」

お茶目なハニーに朝から楽しませてもらいつつイスに座る。支度を終えたハニーもエプロンを外して
向かいのイスに座った。
ここでハニーの紹介をしておこう。俺の恋人という、この世で最も幸せな地位に就いたハニーの名は
トシーニョ・ヒジネーズ。

「誰がヒジネーズだァァァ!!独り言がうぜぇと思ったら勝手にヒトの名前捏造しやがって!!」
「あ、あれっ?聞こえてんの?」
「ったりめーだろうが……この距離で聞こえない方がおかしいだろ!!」
「いやだって、ナレーションが聞こえるのはおかしいじゃん。」
「ナレーション?何言ってやがる。寝室にいる時からブツブツブツブツ……丸聞こえだったぜ。」
「えっ、嘘?マジで?」

訳が分からないといった様子で銀時は辺りを見回した。

「普通にナレーションが入ったじゃねーか。」
「あ、本当だ。じゃあ、さっきまで俺がやってたのは……」
「だから独り言だろ。よく見りゃ鉤括弧が付いてるじゃねーか。」
「はあ!?どれどれ……うっす!こんな薄いカッコが見えるわけねーだろ!!」
「知るか!!だいたいテメー、ナレーションにしたって都合のいいことばっか言ってんじゃねーよ。
何が『毎日食事を作りに』だ。一緒に住んでて家事は交代でやってるだけだろ。そんで、誰がハニーだ!」
「スカート履いてんだからハニーでいいじゃん。」
「昨夜はむしろテメーが『ハニー』だったじゃねーか。」

昨夜、ベッドの中で受ける側であったことを持ち出され、銀時は唇を尖らせる。

「それは順番だろ?見た目はヒジネーズくんの方がハニーっぽいじゃん。」
「だからヒジネーズって何だよ!!」
「違うの?名前がトシーニョだから、そんな感じかと思ったんだけど……」
「トシーニョは源氏名。本名はトシだ。」
「名字は?」
「……土方。」
「外国人じゃなかったの?」
「…………帰化した。」
「帰化する前の名字は?」
「…………」
「どーしたのかなぁ?自分の名前が分かんないの〜?」
「るせェ!外国人の名字なんて、管理人が考えられるわけねーだろ!ヒジネーズが限界なんだよ!!」

こうして、トシーニョの本名は土方トシであると判明した。

「ま、まあいっか。とにかく、土方は土方だし。」
「おう。」

二人は前世の記憶を持っている。生まれた時代や立場の違いに応じて呼び方もそれなりに変えていたが、
最も多いのは「土方」「銀時」と呼び合うことであった。

「とりあえずメシにしようぜ。」
「そうだな。…ほらよ。」

土方は未だ納得がいかないながらもドレッシングを銀時に手渡し、漸くこの日の朝食が始まった。

「お前、相変わらずマヨラーなんだな。」
「マヨネーズはいつの時代も最高の調味料なんだよ。」
「はいはい。……ところで、今日はどうする?」

本日は二人とも仕事が休みである。

「女装してるってことは外出る気ねェの?」
「テメーが嫌なら着替えてもいいぜ。」
「別にいいんだけど……お前、その格好で表歩けんの?」
「当たり前だろ。テメーと初めて会った時だって……」
「でもあん時は夜だったし……」

銀時が土方と「初めて」会ったのは女装クラブであった。

「土方くんさァ……一人の時、オフってどう過ごしてんの?」
「どうって別に。映画観たり買い物したり……」
「女装したままで?」
「ああ。…特に、女の服買いに行く時は男の格好じゃマズイだろ。」
「そっか…。でもさ、喋ったらバレるだろ?」

女装姿の土方は背の高い女性にしか見えないものの、声は立派な成人男性である。
不思議がる銀時に土方は何でもないことのように言った。

「喋んなくても買い物くらいできんだろ。」
「……それもそっか。」

一人で黙々と商品を見て回り、レジで支払いを済ませて帰るだけなら声を出さなくても済むように思える。
実際、店員から声を掛けられるのが苦手だという人の話も聞くし、土方のような買い物方法でも
特段、不審には思われないだろう。

「堂々としていれば案外気付かれないもんだぜ?まあ、気付かれたところで何かあるわけでもねェし。」
「そりゃまあ、客には応対してくれるよな。でも、珍獣扱いされない?」
「ンなもん、元の姿でも同じだ。」

今は黒髪の鬘にグレーのカラーコンタクトをしている土方だが、本来の彼は金髪碧眼である。
その容姿で日本にいれば確かに目立つ。

「お前は、珍獣扱いが嫌で髪染めたのか?銀髪よりは金髪の方が珍しくねェもんな。」
「いや……何年か前に客として占い師が来たことがあって、そん時、ラッキーカラーがゴールドだって
言われたから。そんで、金髪にして源氏名もギンから金時にしたらナンバーワンになったんだぜ?」
「じゃあ、ラッキーカラーが赤だったら赤髪にして赤時にすんのかよ。」
「するよーな、しないよーな……。まあ、お前は素のままで更に上なんだけどね……」

土方も別の店のナンバーワンホストだが、銀時の店より店そのものの規模が大きかった。

「またその話かよ……。お前の店も売り上げが増えてオーナーから褒められたんだろ?」
「ああ。おかげであだ名が『ハニー』になったけどな!」
「いいじゃねーか。間違ってねェだろ、ハニー♪」

食事を終えた土方は銀時の手を取りにっこりと笑った。

「良くねーよ。俺ァ受けじゃねーし。」
「……受けるのが嫌なのか?」
「違ェよ。ただ、俺ばっか受けてると思われんのがちょっと……。でも、ネコの方が女の子達のウケが
いいんだよね〜。」
「テメーも『ハニー』をちゃっかり利用してんじゃねーか。」
「そりゃ、利用できるもんは利用するけども……今日はお前がハニーだからな。」

銀時は土方の手を握り直した。

「……今からかよ。」
「デートしてからがいい?」
「別に……」
「じゃあ……」


二人は手を繋いだまま、寝室へ戻って行った。


(11.07.15)


ありがたくも前作(生まれ変わっても・・・)の続きを希望して下さった方が複数いらっしゃいまして、このたび漸く続きを書くことができました。

カップリングをどうするか暫く悩みましたが、歴史の長い二人ですから、どっちも経験あるだろうということでリバにしました。銀土希望だったR様すみません。

銀土銀も楽しんでいただけるといいな…。というわけで続きは18禁です。注意書きに飛びます。