※年齢制限してませんが、軽い性描写がありますので苦手な方はご注意ください。
後編
「これです。でも…別に有名人がいるわけでもないし、特に見る価値ないですよ」
「そんなことないだろ。家系図があること自体、すげぇよ」
「ただ名前が書いてあるだけですけどね。…この一番下が俺です」
「おー!」
トシさんが何に感心してるのか分からないけど、楽しそうなのでそれは良かった。
俺は家系図を畳の上に広げた。
「この、一番上の人が、それを書いたご先祖様なのか?」
「そうだと思います」
「…坂田銀時?」
トシさんは不思議そうに先祖の名前を読み上げた。
「あ、はい。同じ名前なんですよ」
「なんでなんだ?」
「俺の髪、銀髪でしょ?この人も生まれつき銀髪だったみたいなんです。でもその後は皆黒髪で…
それで、俺が生まれた時にジィさんだか誰だかが『ご先祖の生まれ変わりだ』とか何とか…」
「それで同じ名前なのか…。ていうかお前のその髪、地毛だったんだな」
「…染めてると思ってたんですか?」
「そりゃそうだろ…」
「根元から全部銀色じゃないですか」
「だから、美○明宏みたいに完璧に染めてんだと…」
「誰が美○さんだ!」
別に美○さんは嫌いじゃないけど…何となく一緒にされたくはない。
「ハハハ…。ところでよ、最初の坂田銀時の奥さんは?子どもの名前しか書いてないけど…」
「それが分からないんです。結婚したって記録はないけど子どもがいたのは確かみたいで…」
「じゃあ、養子とかなのか?」
「多分。でもそれだと、俺の髪の遺伝子がどこから来たのか…」
「あっ、そうか…。じゃあ、内縁の妻ってやつか?」
「かもしれないですね」
「…その辺のこと、日記に書いてないのか?」
「見てみます?」
「いいのか?」
「いいですよ。…でも意外です。トシさんって歴史とか興味ないのかと思ってました」
「まあ、史学科の銀時には悪いけどそんなに興味はねェな。けど、知ってるヤツの歴史は別だろ?」
「そうですか?」
なんか嬉しいな。トシさんが俺のこと知りたいって思ってくれてるみたい。
家系図を片付け、今度は二人で「万事屋銀ちゃん日誌」を読むことにした。俺が本を持ち、トシさんがすぐ横に座る。
いつもより近い距離にドキドキする。心臓の音、トシさんに聞こえないかな?そんなことを考えながら表紙を捲った。
日記は筆で横書きという不思議なスタイルで書かれていた。
四月一日 晴れ
今日から万事屋銀ちゃん営業開始。困ってる人の依頼をじゃんじゃん受けるぞ。
江戸の平和は俺が護る!
「………」
「ずっ随分と志の高いご先祖様なんだな」
そう言ったトシさんの顔は明らかに笑いを堪えている。くっそー、日記でウケ狙ってんじゃねーよ。
五月十三日 晴れ
全く依頼がない。ババァにもらった食料は尽き、とうとう砂糖だけになっちまった。
とりあえず喉が渇いたので砂糖水を飲んだ。…かなりイケる。
「………」
「えっと…かなりの苦労人だったみたいだな」
苦労人っつーか、怠けてるだけじゃね?いきなり一ヶ月以上経ってるし…「日誌」じゃなかったのかよ。
五月十八日 晴れ
相変わらず依頼がない。見かねたババァが米をくれた。早速炊いて砂糖かけて食ってみた。…かなり美味い。
五月二十六日 晴れ
砂糖が尽きたので街に出て仕事を探す。隣の家の雨戸の修理を頼まれた。…これで砂糖が買える。
「………」
「とっ当時は砂糖が貴重だったんだな」
なんだよコイツ…米なくなっても仕事しなかったのに、砂糖のためなら働くのかよ。…江戸の平和はどこいった?
その後、なぜか白紙のページを一枚挟み、次のページから別人の字でこう記されていた。
××年四月五日 曇り
何年も放置されていた日誌を発見。勿体ないので今日から僕・志村新八が銀さんの代わりに書くことにした。
今日は行方不明の飼い猫を探してほしいという依頼を受けた。
目的の猫自体はわりと簡単に見付かったがとても動きが速く、捕まえた頃には銀さんも僕も引っ掻き傷だらけになってしまった。
けれど依頼主は猫が戻ってきたことをとても喜んでいた。僕も嬉しくなった。
「なんか…急にまともになったな」
「…やっぱり、今まで変だと思ってたんですね」
「あ、いや…。こ、この志村ってのは誰なんだ?」
「(誤魔化した!?)…さぁ?でも、一緒に仕事してるっぽいですね」
「そうだな」
それからはちゃんと毎日のことが志村新八の字で記されていた。そのうち「神楽」という少女と「定春」という犬も
仲間に加わり、貧しいながらも懸命に依頼をこなして生活している様子が伺えた。
しかしある日を境に再び日記は初代坂田銀時の手へ渡った。
××年十月十日 外は雨だけど心は晴れ
トシと恋人同士になりました。
誕生日に託けて好きだって言ってみたら、マジでお付き合いしてくれるって!
言ってみるもんだよなー。つーことで、今日からこれは俺とトシの愛の記録になりまーす。
「…当時の人も、恋人ができると嬉しいもんなんだな」
「そうですね…。でも、何つー名前の恋人を…トシさん、すいません」
「別に気にしてねぇよ。よくある名前だし…それに、この『トシ』って女だろ?」
「それもそうか」
だけど俺はちょっとワクワクした。これから「銀時」と「トシ」の交際の様子が書かれてるんだろ?
楽しみだなァ。どんな付き合いしてるんだろ…
××年十月十一日 トシと一緒ならいつでも晴れ
昨日誕生日だったと知ったトシは、仕事帰りに菓子を買ってウチに来てくれた。菓子じゃなくてお前がほしいと言ったら
「分かった」と言ってくれたので宿に行った。
キスしただけで俺もトシもビンビンで、我慢できなくて二人で扱いて一回出した。
キスしながら扱いてるだけでもすげぇ気持ちよくて、結局この日は互いに扱いて出させるだけで終わっちまった。
ちょっと残念な気もするけど、まあ、楽しみは後に取っておいた方がいいからな。
そういえば、トシがどっちをやりたいのか聞くの忘れた。突っ込みたいって言うかなァ…
「………」
「(ご先祖ォォォ!何ってもん書いてんだァァァ!!トシさん、顔真っ赤じゃねーか!ちょっと可愛い…
じゃなくて気まずくなるだろ!!)あの…すいません」
「い、いや…。その…当時は、男同士とかって…普通だったのか?」
「へっ?男同士?何でですか?」
「いや、だって、この人の恋人って…」
「(そういえば扱くとか出すとか…)そうですね…男ですね…」
「そうだよな…」
「………」
なんか、これ以上はヤバイ気がする。この状況で俺が「続き読みましょう」とか言ったらセクハラじゃね?
もうやめよう。この本のことはなかったことにした方がいいな。
「あの、トシさん…」
「…銀時は、その…男同士って、どう思う?」
「えっ…」
「あ、だから…先祖が、そういうことで、ショックじゃねぇかと…」
「ああ…俺、そういうのに偏見ないんで平気ですよ」
「そうか…俺も、平気だ」
…トシさんが何だかほっとしたように見えた。まさかトシさん…いや、だとしても相手が俺とは…
でも俺に聞いてきたってことは…いやでも、違ったら大変なことに…。確かめるにしても今じゃなくていいだろ。
トシさんは今日ここに泊るんだし、俺が余計なこと言って気まずくなったら…でも、もし俺の勘違いじゃなかったら
楽しい一夜を過ごせるかもしれない!どうする?あー…考えたって分かんねぇ!
「あのな、俺…銀時のこと、一番大事に思ってる」
「えっ…(どういうこと?友達としてってこと?でも友達にそんなこと言わねぇよな…)」
「あ、あのっ、別にそんな、深い意味じゃなく、その…」
「おっ俺もです」
「えっ…」
「トシさんっ」
「ぎん……」
思い切ってトシさんにキスしてみた。そしたらトシさんの手が俺の背中に!やったァァァァ!!
「トシさん…」
「銀時…本当に俺でいいのか?」
「はい。俺、最初に会った時からトシさんのこと好きでした」
「…土方十四郎の子孫じゃないかもしれないぞ」
「ハハッ…それは関係ないです。トシさんがトシさんだから好きなんです」
「ありがとう」
「俺の方こそ、トシさんとお付き合いできて嬉しいです」
こうして俺はトシさんとお付き合いを始めた。
その夜は心臓がバクバクいってなかなか眠れなかった。…手を繋いで寝ただけだ!爛れたご先祖と一緒にすんな!
だけど…日記にでかでかと書いたご先祖の気持ちはよく分かる。
俺…
トシさんと恋人同士になりました。
(10.09.08)
というわけで、一周年記念お題で唯一くっ付いてなかった二人も漸く結ばれました^^ くっ付いただけで初エッチまで至らなくてすみません。
この銀時君はピュアっぽいので、お付き合いを始めたその日に手を出すなんてできません。…トシさんの方は人の家に泊ってるので遠慮してるのかも?
おまけで万事屋銀ちゃん日誌その後を付けました。銀さんと「トシ」に子どもができます(出産の描写はありません)。大丈夫な方はこちらからどうぞ→★