※ほとんどネタばれありませんが、一応、第三百三十五訓直後という設定です。
※大丈夫な方のみスクロールしてお進みください。













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「土方…俺、お前のことが好きだ!」
「えっ…」

ある日、銀時は真選組屯所に土方を訪ね、そして愛の告白をした。

「急で驚いたよな?でも多分、ずっと前から好きだったんだ。」
「…多分?」
「あっ…気付いたのはつい最近なんだ。ほら、銭湯で会った時。あん時、お前のカラダ見てたら
ドキドキっつーか、ムラムラっつーか…あっ、でも別に、ずっとそんな目で見てたわけじゃなくて…。
あん時は屁怒絽一家が来て、それどころじゃなくなったし…えっと…あっ、ゴメン。こんな所で…」

門前で愛の言葉を叫んだため、野次馬に隊士達が集まってきた。その中には沖田の姿もあった。

「良かったじゃねーか、土方さん。長年の片想いが報われましたねィ。」
「総悟、余計なことを言うな!」
「えっ、もしかして土方くんも…」
「そうでさァ…土方の野郎は、旦那を想って夜な夜な…」
「総悟!テメーは仕事に戻れ!…お前らもだ!」

一喝で隊士達を散らせると、土方はちらりと銀時を見て何処かへ向かって歩き出す。
付いて来いと言っているような気がして、銀時は土方の後を追った。



二人は屯所から少し歩いた暗い路地で止まった。

「万事屋テメー、屯所の前であんな…嫌がらせか?」
「本当にごめん!でも本気だから!土方への想いに気付いたら、なるべく早く伝えたいって思って…」
「…めでてェ野郎だ。フラれる可能性は考えなかったのか?」
「いやむしろ、フラれる可能性しか考えなかったよ?」
「は?」
「一度や二度フラれたくらいで諦めがつくなら、最初からお前みたいなヤツ好きになってねェよ。」
「…俺みたいって?」
「男だし、仲がいいってわけでもねェし…。それでもいつの間にか好きになってたってことは、
普通の好きってレベルじゃねェってことだ。…そう思わねェ?」
「まあ、そうだな…」
「だったら早く俺の気持ちを知ってもらって、俺のことを少しでも意識してくれた方がいいじゃん。」
「そうかもな…」

長年銀時へ想いを寄せていながら何もできずにいた土方は、銀時の前向きな思考に感銘を受けていたが
そういう気持ちを表現するのが照れ臭いのと、一つ引っかかることがあり、素直にはなれなかった。

「と、いうわけで改めまして…土方くん、俺とお付き合いして下さい。」
「断わる。」
「………はい?」
「断わるっつったんだよ。」
「ちょっ…ええええ〜!断わるって…おまっ、ナニ言ってんの!?
ここはお前がポッと頬を染めて、『はい…』とかって言うところじゃねーの!?」
「誰がンな気色悪ィことを言うかっ…」
「まあ、多少のツンは覚悟してたけどね…『断わる』はナイだろ…。」
「一度や二度フラれたくらいじゃ諦めねェんだろ?頑張れよ。…じゃあな。」

緩く右手を上げて路地を出ていく土方を、銀時は手首を掴んで引き止める。

「いやいやいやいや…ストーップ!…ちょっと落ち着こう?」
「慌ててんのはテメーだろ?」
「そりゃ慌てるだろ!これから楽しいお付き合いが始まるとか思ってたら、断わられたんだよ!?」
「フラれる可能性しか考えてなかったんだろ?ありゃ、嘘だったのか?」
「嘘じゃないよ?嘘じゃないけど、さっき沖田くんがさァ…」
「総悟の言ったことなんざ、真に受けんな…」
「いやでも…ナレーターも『長年銀時へ想いを寄せていながら』とか言ってたよ?」
「何でテメーにそれが聞こえんだよ…」
「とにかく、土方くんも銀さんのこと好きなんでしょ?だったらお付き合いしよーよー。」
「断わる。」
「何で!?」
「なんか、ムカつくから…」
「何それ!?意味分かんないんですけど!」
「テメーも俺と同じ気分を味わいやがれ。」

土方は腕を振って銀時の手を外し、屯所に向かって歩を進め始める。

「ちょっ…土方、待てって!あれか?部下の前で告白したの怒ってんのか?だったらやり直すから!
ねえ、無視しないでよー…。じゃあ、土方くんに質問!いつから銀さんのこと好きでしたかー?」
「………」

土方はふと立ち止まって数を数え始めた。

「テメーが俺の刀を折ったのが第九訓か…」
「もしかして…そんな前から?嬉しいなぁ〜…」
「テメーと銭湯で会ったのが第三百三十四訓だから………まあ、キリ良く第六百訓にしてやるか。」
「へっ、何が?」
「テメーと付き合う日。」
「はぁ!?六百って…あと何年かかると思ってんだよ!」
「六年くらいだろ?」

平然と言ってのける土方に銀時が食い下がる。

「何でそんな先まで待たなきゃなんねーワケ!?」
「俺はそれ以上待ったんだよ…。テメーだけ、自覚してすぐに付き合えるなんざ許さねェ…」
「許さないって…それじゃあ、お前の片想い期間も延びるだけだよ?」
「テメーが俺に好きだっつった時点でそれは終わってる。」
「じゃあ、俺だって片想いじゃないじゃん!」
「いや…俺はテメーから交際を申し込まれて断わった。テメーは片想いだろ…」
「何その屁理屈!片想いの長さとか、どうでもいいじゃん。お互い好きなんだから付き合おうぜ!」
「おや…まだくっ付いてなかったんで?」
「あっ…」

話しているうちに二人は屯所へ戻って来ていた。出迎えた沖田は至極楽しそうな笑みを浮かべる。

「チッ…テメー、性懲りもなくまた屯所で…」
「いや、今のは不可抗力だよ!ていうか、おい!なに帰ろうとしてんの!?」
「総悟…部外者を中に入れんじゃねーぞ。」
「へ〜い…」
「ちょっ…土方っ!?俺は…俺は、諦めねーからなァァァ!!」

建物の中に入っていく土方の背中に銀時の叫び声が響いた。



*  *  *  *  *



六年後。
「ちょっと待ったァァァ!!っざけんなよ!…今のナレーター無し!六年なんか経ってねェよ!
屯所から万事屋に戻ってきただけだ!折角両想いだって分かったのに、六年も大人しくしてられるか!
何か…土方と今すぐにお付き合いする方法はねェか…。六年なんて待つのは絶対ェ嫌だ!
……ていうか、土方はよく六年も片想い続けてくれたよな…。
まあ実際、俺の方が長いこと無自覚だったってだけで、結構前から両想いだったんだとは思うけど…
…きっと、何となくでもそれが伝わってたから、土方は諦めずにいて……そうだ!
実は俺も長年想い続けてたってことにすればよくね?片想いが長いと引かれると思って、
最近気付いたって言っちまったとか…よしっ、その手でいこう!」



六年越しの片想い



えーっと…土方に「実は俺も…」って言う前に、今までのことを振り返っておいた方がいいよな。
ただ言っただけじゃ、「どうせ嘘なんだろ」って一蹴されて終わりだ。ちゃんと惚れてたってのを
分かってもらうためには、「あの時お前と会えてドキドキした」的なことを伝えればいい。
土方を好きだと自覚した今の俺にはそれができる!

まずは……土方が銀さんに思わず惚れちゃったっつー、屋根の上の決闘ね。あー…あん時はねェ…
銀さんも若かったからねー…。いや、歳は取らないんだけどさァ…でも今よりちょっと丸い感じ?
…太ってるとかじゃなくて。頬とか…って、見た目のことはどうでもいいか…ここは文字だけだしな。
えっとー…まあ、なんだ…とにかくあん時は、敵である俺に対しても真っ直ぐな土方を見て、
俺もちょっと真面目にやってやろうとか、そんな感じで………とにかく、土方の真っ直ぐな姿勢に
魅かれた…みたいな?うん。それに決定!…実際、斬られたけど嫌なヤツだとは思わなかったし…。

次は…花見か?ここは俺達の場所だ、とかいちゃもん付けて来て……もしかしてアレ、俺に声を掛ける
口実だったりして…。やっべ…もしそうだったら萌えるんですけど!なんか、可愛くね?
鬼の副長さんが俺なんかに必死で…かどうかは分かんねェけど…こういうのって、嬉しいな…。
おっと違った…。この時俺は、土方の何処に魅かれたかだ…。そういやぁ、私服見たのってあれが初?
アイツさぁ…なんであんなに前開けてんの?男の色気をアピールですか?くっそー…ずりィよなぁ…
あれ、俺がやったら「だらしない」とか思われんだぜ?アイツだと……カッコいいんだよなぁ…

…なんか、恥ずかしいな。次行こう、次!

次っつーと…蚊の天人か?その前に、源外のジィさんが暴れた祭に真選組もいたらしいけど…
直接会ったわけじゃねーしな…。アイツだって、俺が会場にいたなんて気付いてねェだろ……多分。
あー…蚊の天人の時は簡単だ。「初めて彼のお家に行っちゃった☆ドキッ」みたいな感じだろ、うん。
アイツ、幽霊とか怖かったんだな…ププッ…。…誰だ今、銀さんも同じでしょ?とか思ったヤツ!
俺は違うからね。土方くんが一人で怖がってるのは可哀想で、付き合ってあげただけだからね。
一人より二人って言うだろ!
こん時は…一晩一緒に過ごしたんだよな。…いや、他のヤツらも一緒だったけど。勿体なかったなぁ。
自覚してりゃ、あはんでうふんな一夜を…。あ〜〜、早く土方と付き合いてェ!!

あー…まだ最初の一年も振り返ってねェってのに、既に挫けそうなんですけど…。メンドクセェ…。
大事なのは今だろ、今。俺は土方のことが好きで、土方も俺のことを好いてくれている。
それだけで充分じゃねーか。昔のことを振り返っても、「勿体ないことした」って思うだけだよ…。
映画館で手ェ握ればよかったなとか、サウナでガバッといっちゃえばよかったなとか、
一生ちびちびたかるってアレ、ちょっとしたプロポーズじゃね?とか、チコン貝じゃなくて俺の×××を
咥えて欲しかったなァとか……こんな風にサラッと振り返っただけでも、俺がいつから土方のことを
好きだったのか分からなくなる。…少なくとも、大分前から気になっていたっぽいってのは分かる。

土方も同じ気持ちだと知って、素直に嬉しかった。男同士の俺達がこうやって互いを好きになるなんて
奇跡じゃね?だったらその奇跡、絶対ェ形にしてみせる!


俺は、もう一度屯所に向かった。


(11.01.18)


後編ではその後も振り返ります。セリフ多めで動きが少ないですが、二人の六年間にお付き合いいただけたらと思います。