おまけ


「せんせーただいまー。はい、おみや…痛っ!」

イギリスから帰り、空港に迎えに来てくれた先生にお土産を渡そうとしたら殴られた。

「痛ェ!何すんだよ…体罰反対!」
「もうテメーは生徒じゃねーから体罰じゃねェ」
「じゃあDVだ。デートDV!」
「テメーで蒔いた種だろーが」

怒鳴られるくらいは覚悟してたけど、まさか殴られるとは…。でもさ…

「先生、DV否定しなかったってことは俺達が恋人同士ってことだよね?」
「あ?知るかっ」
「待ってよー」

先生はスタスタ歩いて行ってしまう。でも顔が赤くなってるのは俺の気のせいじゃないよな?

「ねえ先生…今日、学校は?」
「休みだ」
「平日なのに?春休みでも先生って仕事なんじゃないの?」
「…有給とった」
「もしかして、俺が帰ってくる日だから?」
「別に…生徒が長期休み中でもないと有給取りにくいからな…」
「素直じゃないなァ…。まっ、そういうトコもいいんだけどね」
「調子に乗り過ぎだ」
「いてっ」

また小突かれた。…さっきみたいに「殴る」って感じじゃないけど。ていうか…

「先生さァ…もしかして口より先に手が出るタイプ?」
「かもな…」
「マジでか…。体罰で訴えられないように気を付けてね」
「仕事中に殴るかよ。テメーだって今日以外で俺に殴られたことねェだろ?」
「そうだけど…何気に口調も変わってない?めちゃくちゃガラ悪いよ…」
「これが地なんだよ」
「つまり俺は、プライベートの先生を見てるってことだよね。なんか嬉しいな。
でも先生…本当に俺のこと好き?いくら地だからってイキナリ凶暴になって…嫌われたらどうすんの?」
「誤魔化して付き合っても楽しくねェだろーが」
「それもそうか…」


先生が電車の駅に向かったので俺も付いていく。
電車に乗り、空いている席に隣り合って座る。

「ねえ先生…どこ行くの?」
「用が済んだから家に帰るんだが…お前こそどこ行くんだ?お前ん家、この電車じゃ遠回りだろ?」
「えぇっ!これからデートするんじゃないの!?まだ昼前なのに…」
「そんな約束いつしたんだよ」
「でっでも先生、休み取ったって…」
「ああ。休みだから家でのんびりしようと思ってな…」
「そんなァ…」
「…で、お前はどこに行くんだ?」
「むぅ…」
「ちなみに俺ん家は、三つ先の駅で乗り換えな」
「えっと、それって…」

先生はニッと笑った。もしかしてこれは…お誘い!?

「もう一度聞くぞ。…お前は今日これから、どこに行くんだ?」
「せっ先生のウチ…」
「そうか」

先生はいいとも悪いとも言わなかったけど、これはOKってことなんだよな?
どっどうしよう…嬉しいけど、心の準備が…。まさか家に呼ばれるとは思わなかった…。
普通に、昼ご飯一緒に食べるくらいだと…やっぱ大人は違うな。

俺、何にも用意してないけどいいのかな?「恋人と会うのに何も持ってねェのかよ」とか言われたらどうしよう…。
それどころか「そんなヤツとは付き合えねェ」とか言われたら!…ヤバイ!
長旅で疲れたことにして大人しく家に帰るか?いやでも、行くって言っちまったし…ああああ、どーすればいいんだ!


*  *  *  *  *


結局、どうしたらいいか分からないまま先生の住むマンションに着いてしまった。

「どうぞ」
「あ、はい」
「…坂田?」
「あ、はい」
「はいじゃなくてよ…靴脱いで上がれよ」
「あっ…はい」
「…坂田、本当にどうしたんだ?」
「あ、あの…」

もうこうなったら正直に謝るしかない!それで嫌われたら諦めよう。
先生だってさっき「誤魔化して付き合っても楽しくない」って言ってたし!…でもできれば嫌われたくないな。

「先生ごめんなさい!」
「…はっ?」
「俺、ガキだから…まさか、初デートで家に呼ばれるとは思ってなくて、その…何の用意も…」
「用意?土産ならさっきもらっただろ…」
「手土産とかじゃなくて、恋人の家に来る用意を…」
「…恋人の家に来るのに何か必要なのか?」
「そっそりゃあ、先生は大人だから用意してるのが当たり前なのかもしれないけど…」
「だから、何がねェのか言ってみろって。…殴らねェから」
「そういう心配してるわけじゃないけど…でも、嫌われる、かも…」
「忘れ物したくれェで嫌いになるかよ…」
「…本当に?」
「ああ」

嫌われなくても呆れられるかもしれない。今日は帰れって言われるかもしれない。でも、言うしかない!

「あ、あの…ごっゴム、とか…」
「ゴム?ごむ………もしかして、コンドームか?」
「はい。…ごめんなさい」
「………」

先生は黙って俯いてしまった。うぅ…やっぱ、素直に言い過ぎたかな?これに関しては誤魔化すべきだった?

「あ、あの…せんせ…」
「…プッ」
「ぷ?」
「わ、悪ィ…くくくっ…」

もしかして先生、笑ってる?あまりにお粗末すぎて笑うしかないって感じ?

「あの、本当にごめんなさ…」
「いいから。くくっ…謝んなくていい…」
「で、でも…」
「くくっ…そうか、坂田くれェの歳だと、そういうもんだよな…」
「先生?」
「そうかそうか…お前はヤるつもりでここへ来たんだな」
「…へっ?」
「いやいや、オメーは悪くねェよ。俺の考えが足りなかった…。そうだよなァ…恋人の家に誘われたら
セックスに誘われたんだと思うよな…うん」
「思うよなって…ち、違うの?」
「いやだから、オメーは悪くないって」
「それって違うってことだよね!先生はそんなつもり無かったってことだよね!?」

マジでか!?大人って、家に行ってもエッチしねェの!?何だよ俺…めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん…

「別にその気がねェわけじゃねーよ。ただ…とりあえず一緒にメシ食って、その後のことはそれから考えようと…」
「うぅ…」
「でも、まあ…オメーがそのつもりなら、ヤるか?」
「へっ?」
「その前にメシだな。…その辺の定食屋とかでいいか?」
「あ、あの…」
「何だ?ゴムならコンビニか薬局で買えばいいだろ?(常備してるとかは言わない方がいいよな…)」
「そっそう、だね…」
「じゃあ、荷物置いて行くぞ」
「あ、はい…」


色々分からないことだらけで、それからどこへ行って何を食ったか、先生と何を話したか、全く覚えてない。


先生の家に戻ったらシャワーを浴びるように言われて、浴びたら先生が交代で入って…
その間どうしていいか分からなくて、脱衣所のドアの前で先生が出てくるの待ってたらまた笑われて…

そして遂にその時が来た!
先生のベッドに向かい合って座っていると心臓が飛び出しそうなくらいドンドン鳴った。
しかも先生のベッドはセミダブルで…二人で寝られる大きさなのが余計に鼓動を加速させた。

「坂田…」
「は、はいっ!!」
「…無理しなくていいぞ。今日じゃなくても、もっとゆっくり進んだっていいんだから…」
「むっ無理じゃない!けど…実は俺、男同士って初めてで…しかも先生は大人だし…」
「嫌じゃねェなら…俺に任せてくれるか?お前は横になってるだけでいい」
「ほ、本当にそれだけでいいの?」
「ああ。…慣れてきたら動けばいい。ところで坂田…オメー、上と下どっちがいい?」
「…上と下って?」
「男同士でどうヤるか、知ってるか?」
「それは調べたから知ってる!その…ケツに、入れんだよね?」
「ああ。それで、入れる方と入れられる方、どっちがいい?」
「分かんねェ…。先生は、どっちがいいの?」


(10.07.22)


突然ですがここで問題です。この後、土方先生は何と答えるでしょう(笑)!

  (1)できれば入れる方がいい…

  (2)できれば入れられる方がいい…

  (3)本当はヤりたくねェんだ…

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