※真選組が史実で、銀さんは現代の大学生です。
※大学生の銀さんが歴史上の人物としての「土方十四郎」を語るという設定です。
以上を頭に入れてお読みいただけたらと思います。↓




「坂田、お前も次のコマ空いてたよな?一緒にメシ食いに行くか?」
「俺はいいよ」
「でもよー…」
「放っとけって。アイツ、本だけが友達なんだからよ」

俺は早く図書館に行きたくて、そんな揶揄も気にならなかった。


禁断の関係その十:死人を想う


大学に入学して三ヶ月。サークルにも入らず、同じ学科内にも休み時間を一緒に過ごすようなヤツはいない。
けど、それが寂しいとは思わない。「本が友達」ってのは強ち間違いじゃない。本を読んでいる時が何より楽しい。
特に大学には地元の図書館なんかじゃ置いてない貴重な本もいっぱいあるからな。
俺は本が目当てで大学を決めた。

何の本でもいいってわけじゃねェ。数ある大学の中でここを選んだ理由、それは幕末の資料が一番多いからだ。
俺は幕末に活躍した真選組が大好きなんだ。
ガキの頃、ジィちゃんと一緒に大河ドラマを見たのがきっかけで好きになった。

高校入学時の俺の成績じゃ、正直言ってこの大学に入るのは厳しかった。
そもそも、ウチの高校から目指せるレベルじゃない。
だけど何としてでも入りたくて、俺は部活にも入らず三年間必死で勉強したんだ。
だから、入学できたからには読みたい本は全部読んでやる!


真選組の中でも、副長の土方十四郎は理想の男だと思ってる。

土方十四郎は何てったってとにかくカッコイイ!
田舎者だと蔑まれても自分の理想とする士道を貫き通し、鬼と呼ばれるほどの強さを持ちながら
真選組の頭脳とも称されるほど頭も良い。
こんなに凄いのに「副長」ってところがまたイイ。
局長の近藤より絶対優秀だと思うのに、むやみにしゃしゃり出ず、局長をちゃんとサポートしてたんだ。

しかも見た目もカッコイイ。
局長の近藤なんてゴリラみたいな顔してて、まあ、いかにも「強そう」って感じではあったけど…
土方十四郎はモテそうな容姿をしてる。
今の美的感覚で言っても「イケメン」の部類に入るカッコよさだし、当時もかなりモテたみたいだ。
近藤が「真選組一モテる」と言ったという記録が残っているくらいだからな。

…やっぱサラサラヘアーだと違うのかね。
写真の土方十四郎はストレートヘアーだった。前髪の中央が少し長めで、そこがまたカッコイイ。
江戸に出る前は髪が長くて、今で言うポニーテールだったらしい。…写真には残ってないけど。
きっと、それも似合ってたんだろうなァ…。いいよなー…いい男は何でも似合って。
俺なんか髪伸ばしたら大変なことになるからね?下に伸びないで上と横に広がるからね!
あー…サラサラヘアーになりたい。

…じゃなかった、土方十四郎の魅力な。

今までの説明でかなり分かったとは思うけど、とにかく土方十四郎はカッコイイ、男の中の男なんだ!
俺も土方十四郎みたいになりたくて、ガキの頃はチャンバラばっかりやってた。
近くに剣道場があるって知ってからは、親に頼み込んで習いに行った。
…まあ、受験勉強に専念するため、高校入ってすぐやめたけど。
受験終わったからまた剣道始めようかなァ…でも、読書の時間が減るのは嫌だなァ…。
でも…土方十四郎は剣の鍛錬を怠らずに組織を動かすための勉強もしたって言うからなァ…
やっぱ、土方十四郎を理想とするからには文武両道だよな!
よしっ、また道場に通おう!



その日から俺は週二回の道場通いを再開して、それ以外の時間を読書に費やすことにした。
道場行かない日は筋トレしたりその辺走ったりして読書の合間に身体を鍛えてみたら
少しだけ土方十四郎に近付いた気がして嬉しかった。

もし俺があの時代に生まれてたら…真選組に入って土方十四郎と一緒に戦えたかな?
生の土方十四郎に会えるんだから本読む時間は要らねェし、その分体鍛えて強くなれると思うし…。
…いや、俺は興味があることしか頑張れないから、真選組みたいに規律が厳しい組織の一員になるのは難しいかもなァ。
きっと、入隊してすぐにクビになるぜ。…クビっつーか、切腹か。

うわぁ…切腹は嫌だなァ。でも「鬼の副長」だし、絶対「腹切れ」とか言われちゃうよ、俺…。
…うん。俺には真選組は向いてなさそうだ。
いくら土方十四郎が好きでも、人には向き不向きがあるから、そこは仕方ない。諦めよう。

何とか真選組に入らないで、土方十四郎とお近付きになれる方法はないかなァ…。


そんなことを考えながら眠ったある日の夜、俺は不思議な夢を見た。

夢の舞台は幕末の江戸。
だけど空には宇宙船が飛び交い、今よりも文明が進んでるような変な時代だった。
俺は今よりもちょっと年をとっていて、黒い洋服の上に白い着物というよく分からない格好をしていた。
土方十四郎ももちろん出てきて、彼は当然の如く写真と同じ容姿で…何故だか俺のことを「よろずや」と呼んだ。

俺と土方十四郎は会ってすぐにどうでもいいことでケンカした。目付きが気にくわないとか何とか…
でもそれが嫌な感じじゃなくて、結構楽しかった。
確かに…土方十四郎だって一人の人間なんだし、文献に残ってないような下らない日常生活もあったよな。

それから驚いたのは、土方十四郎が何にでも大量にマヨネーズをかけて食事をしていたことだ。

一体どこからそんなぶっ飛んだ設定が出てきたのか分からねェ。
昨日見たテレビの歴史番組(真選組特集)で、キューピーのCMでもやってたっけ?
そもそもあの時代にマヨラーなんて存在しねェだろ。

…いや、そうとも言い切れないのか?マヨネーズ自体、作るのはそんなに難しくない。
材料だって卵と油と酢だろ?それくらいならあの時代だってあるよな?


俺の中で新たな疑問が生まれた。
土方十四郎はマヨネーズを食べたのか―今度はこの視点で本を読んでみよう。
まだまだ土方十四郎について知ることはたくさんありそうだ。

これからも色んな本を読んで、同時に体も鍛えて、少しでも土方十四郎みたいにカッコイイ男になれるよう頑張るぞ!


(10.07.19)


最後のお題「死人を想う」でした。「死人」というより「偉人」ですが…いかがでしたでしょうか?最後も「禁断」っぽくなかったですね^^; 死ネタは書きたくないので、

ラストが「死人を想う」となっているこのお題に挑戦するか否か実はかなり迷いました。けれどある時、「歴史上の人物でよくね?」と思い付き今日に至ります^^

歴史上の土方さんにかなり惚れこんでいる様子の坂田くん。恐らく本が友達というだけでなく、本が恋人でもあると思います^^ ここまでお読み下さりありがとうございました。

追記:続き書きました。18禁です。→

 

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