どうしたら土方のヘタレが治るか…俺は真剣に考えていた。
ただおろおろするだけなら、ちょっとイラッとはくるが、実害がないので放っておいた。
だが昨日のエッチはやばかった。

土方のヤツ…ヘタレなくせして性欲は一人前なんだよ。
一人前にヤりたい気持ちはあるのに、ヘタレだからヤりたいことをヤりたいって言えなくて
我慢して我慢して我慢して我慢して…遂に限界が来たらしく暴走しやがった。
それまでウザいくらいに「やっていいか?」っていちいち聞いてきたアイツが、暴走してからは
俺がやめろっつっても止まんなくて…俺は翌朝、ロクに動くこともできなくなった。

というわけで、アイツのヘタレを治したいと本気で思ってるんだが…ヘタレってどうすれば治るんだ?
「ヘタレを治す薬」とかあれば簡単でいいんだけど、生憎そんなものは存在しない。
じゃあ…ちょっとずつ慣れてもらうしかねェのか?面倒だが、それしかねェか…。
全部とはいかなくても、少しはアイツが自分の意見を出せるようにしねェとな。
とりあえず次に会う時は、わざとアイツが嫌がるようなこと言って「嫌だ」って言わせてみよう。

それから俺は、土方が嫌がりそうなことを色々と考えて過ごした。



ヘタレな恋人 第七話:引き止める勇気くらい持て



土方の非番前夜、俺は土方をホテルに誘った。
…今日は例の「嫌だと言わせる作戦」の実行日だ。


ホテルに着いて交代でシャワーを浴びた後、俺は作戦を実行した。

「土方、俺…もう、お前とセックスしたくない」
「…そうか、分かった」
「えっ…」

マジで?こんな重大発表、理由とかも聞かずに即承諾?もうちょい食い下がれよ!
だってコイツ、絶対ヤる気でここまで来たんだぜ?
ホテルに行く時はヤる時って、俺がこの前そう言ったんだからよ…。

「理由…聞かねェの?」
「この前、かなり無理させちまったからな…ヤりたくねェと思うのは当然だ」
「ちょっ…マジでヤれなくていいの?ラブホまで来てんだよ?」
「ここが何処だろうと、お前の嫌がることをするつもりはねェ」

コイツ…間違った方向に意志が強くね?

「お前さァ…もうちょっと自分のこと考えてもいいんじゃねーの?」
「そうはいかねェ。お前は俺なんかと付き合ってくれてるんだ。それ以外で嫌なことは…」
「おい…俺がいつ、お前と付き合うの嫌だっつった?」
「えっ、あ、いや…」

土方が急に焦り出す。…恐らく俺がキレたからだろうな。
しょーがねーだろ、ムカついてんだから。俺から告白して付き合うことになったのに、何で…

「土方テメー…俺の愛を疑ってんのか?あ!?」
「そっそういうわけじゃ…」
「そういうわけだろーが。いつもいつも俺に聞くばっかでテメーは何もしねェ」
「そ、それは…」
「下手なことしたら俺に嫌われるとか思ってんだろ?それが俺をバカにしてるっつってんだよ。
俺ァな…何があってもお前と別れるつもりはねーから覚えとけよ!!」
「………」

土方は瞳孔ガン開きで固まってる。…あれっ?もしかして俺、勢いに任せて凄いこと言わなかったか?

…言っちゃったよ、おい。コイツに自己主張させるつもりが何で俺、愛の告白なんてやってんの?
いや、あまりに自分を卑下するコイツにムカついてカーッとなって…うおおぉぉぉっ!
恥ずかしすぎるだろ、俺ェェェェ!そりゃ、土方とは好きで付き合ってるけどさァ…これはナイだろ…。

ヤバイ…もう、無理。
いたたまれなくなって俺は土方から視線を逸らした。
すると土方が少しだけ、ほんの少しだけだけど距離を詰めた。

「あっあの…」
「…何だよ」
「そ、その…すまん」
「…何が?」
「お前の…その、あっ愛を、疑うようなことをして…」
「別に…。そもそも何でそんなに自信ねェの?」
「お前は、人気があるから…それなのに、俺といてくれることが、信じられなくて…
あっ、その…お前を、疑っているわけでは決して…」
「…俺別に、そんな人気ねェと思うけど?」
「そんなことはねェ。お前は、皆から好かれてて…」

土方のヤツ…勝手に俺のこと皆のアイドルか何かと勘違いして不安になってんのか?バカだな…

俺は土方の首に腕を回した。

「なァ土方…他のヤツらがどう思ってよーと関係ねェよ」
「だ、だが…」
「俺にとっちゃァ、そんなことどーでもいいんだよ。俺はただ、オメーがどう思ってるかが知りてェ」
「ぁ………」
「なァ、教えてくれよ。オメーは俺のこと、好き?」
「もっもちろん、すすっ好き、だ」
「…俺もっ」

首に回していた腕を引き寄せて、土方の唇にチュッとキスをする。
我ながら恥ずかしいことをしてるという自覚はあるが、まあ、二人きりだし、いいだろ。

よしっ、ここで作戦再開だ!ここまでラブラブにしてやったんだから少しは自信持てただろ。

「それで…俺がヤりたくないっつったらどうすんだ?」
「あ、だからそれは仕方がな「くねェよ!ったく…じゃあ、今日はもう帰るっつったらどーすんだよ」
「えっ、じゃあ家まで送って「違ェよ!ここは『帰るな』って引き止めるトコだろーが」
「そんな、お前のやりたいことを阻害するようなことは…」
「あのさァ…冗談かもしんないじゃん。…冗談じゃなくても、話してるうちに気持ちが変わるかも
しんないじゃん。もっと粘れよ!オメーはヤりたくねェのか?朝まで一緒にいたくねェのか?」
「そんなことは…」
「そうだろ?ヤりてェし、朝まで一緒にいてェんだろ?」
「あ、ああ…」

漸く土方は認めやがった。
だが自己主張には程遠いな…。もう少し頑張ってもらうか。

「よしっ、じゃあオメーの気持ちを言ってみろ!」
「気持ちって…」
「俺とヤりたいし、朝まで一緒にいてほしいって言ってみろって」
「………」

土方は尚も戸惑っている。何だよ…とりあえず言えばいいじゃねーか。
本当に世話の掛かる野郎だな…。

「さんはいっ!」
「!?…おっ、お前と…やっヤりた、ぃ…」
「…それから?」
「あ、朝まで、一緒にいて、ほし、ぃ…」
「よしっ、じゃあ一緒にいてやるし、ヤってやる」

つっかえながら自己主張(なのか?)をした土方に、大サービスでありったけの笑顔を作って抱き付いた。
それなのに土方は…

「え、いや、だが…」
「オメーな…自分の主張が通ったのに躊躇すんじゃねェ。俺だって別に無理してねェよ。
俺、本当に嫌なことは何度頼まれたってダメだから」
「そ、そうなのか?」
「そうなの。…じゃあヤろうぜ」
「………」
「ヤ・る・ぞ!」
「あ、ああ…」

ふー…「ヤりたい」って言わせるだけで一苦労だな。
これで少しは土方から言ってくれるようになればいいけど…まあ、難しいだろうな。


でも、この日の土方はヤる時に、ほんのちょっとだけど自分から動いてくれた…
ような気がしないわけでもないかもしれない…って感じだった。


(10.05.19)


久々の土銀お題です。お待たせしました!なんだかラブラブになってしまいましたね^^; 銀さん、土方さんのこと大好きです。…もちろん土方さんも銀さんのこと大好きですよ。

大好きだから自己主張してほしい銀さんと、大好きだから自己主張できない土方さん…お似合いのカップルですね(笑)

ヘタレな土方さんを時に厳しく、時に優しく導いてくれる銀さんは健気で可愛いですね^^。土方さん、もうちょい頑張れ! ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

追記:続き書きました

 

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