お題配布元:銀魂深夜の即興小説45分一本勝負
ルール:発表されたお題に45分以内で小説を書き、そこから15分以内に発表する。
以下の作品は2014年9月5日に出されたお題「星月夜には夜食を作り」で書き、pixivにアップしたものです。
糖分のない生活なんて考えられないから
「マヨネーズさえ摂っときゃ何とかなる」が信条のアイツはここ何日か、そのマヨネーズですら
碌に摂取していない。近頃テロ活動も落ち着いてきて暇になったかに思えたが、おかげで飲酒
運転の取り締まりだの防犯キャンペーンだのに駆り出され、結局のところ忙しいらしい。
仕事をしているのは確かだからそれなりに食って寝ているのだろうけれど、アイツにとって最も
重要な栄養分が欠けているとすれば即ち由々しき事態に陥りかねないということだ。
仕方ねぇ。この俺が一肌脱いでやりますか。
* * * * *
午後十時。真選組屯所。十名程の隊士達の前で副長の土方が今夜の任務について説明していた。
「スリが頻発している地区のパトロールをしてもらう。警察だと気付かれぬよう私服でだ」
「どーもー、万事屋銀ちゃんでーす」
「はあ!?てめっ、何処から潜り込んだ!!」
「あ、俺が入れた」
トシに届け物だと――善意100パーセントの笑顔を見せられては無碍にできない。だが、この場に
いる殆どが銀時と己の関係を知っているのだ。職務中に不謹慎だと思われてはマズイ。
しかもタイミングの悪いことに、普段はサボって土方の話など聞かない沖田が今日に限ってここに
いる。僅かでも対応を誤れば何十倍にも誇張されて組中に広まるに違いない。
可能な限りぶっきらぼうに、視線も合わさずに何か用かと尋ねた。
「夜食をね……」
「あ?」
職務中に不謹慎だと思われてはマズイというのに、銀時の懐から、ピンクのイチゴ模様の風呂敷に
包んだ重箱のようなものが出てきてしまう。早速沖田が突っかかった。
「俺らは食事係が作った握り飯をパトロールの合間に食うってのに、自分一人だけ恋人の手作り
弁当ですか」
頼んだ覚えはないと突き放してみるも、折角の厚意を無駄にするなと近藤から窘められる始末。
「手作りは手作りだけど弁当じゃないから。おにぎりにでも付けて食べて」
「は?」
「いっぱいあるから、沖田くんも良かったらどうぞ」
「お、おい!」
「仕事の邪魔してごめんねー」
右手をひらりと上げ、銀時は去っていく。その後ろ姿を呆然と見送る土方の横で、沖田は勝手に
包みを解いていた。
「やっぱり土方専用弁当じゃねーか……」
三段重ねの重箱の中身は全てマヨネーズ。広げられたそれを一目見て土方だけは分かった。
ここに入っているのはただのマヨネーズに非ず。マヨネーズ銀時スペシャル(命名:土方十四郎)
である。その日の土方の気分はもとより、気候や食す時刻まで計算に入れて完璧な味付けの
施されたマヨネーズなのである。
とりあえず死ね土方――沖田の構えたバズーカから、我が身より先に重箱を護る土方であった。
(14.09.06)
「そのうちまた参加したい」と言ってから三ヶ月、漸く二回目の参加となったワンライです。
ケンカップルも好きですが、こうして自然と相手を思いやれる域に達している二人も好きです。
久々にマヨチャージできた土方さんは、更にきびきび働くことでしょう^^ ここまでお読み下さりありがとうございました。
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