※一応、劇場版の「万事屋よ永遠なれ」ネタです。
※CPはリバになる予定です。
以上をお読みになり、大丈夫と思われた方のみお進みください。
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戦争にいい思い出なんてない。結局のところ殺し合い。敗者は勿論、勝者にも利益のない戦いだった。
だがヤツらは……ヤツは何故か楽しそうに戦っていたっけ。
劇場版銀土銀馴初編 多串さんよ永遠なれ
今でもあれが現実だったのか、自分の記憶ながら疑わしい。攘夷戦争中、急に現れて天人軍を
蹴散らし消えた連中。女やデカイ犬まで連れていて戦争をなめてるのかと思いきや、バズーカや
大砲までぶっ放した黒服軍団は戦い慣れしているようにも見えた。
まあ、大将戦には手こずってたようだったから銀さんが手伝ってやったけどね。
銀さん――と呼ばれていたアイツは一体何者だったんだ?記憶の中の「銀さん」と今、鏡に映る
男は非常によく似ているような……あん時敵の大将に捕まってた「銀さん」の仲間は新八と神楽に
似ていたような……他人の空似か天人の幻覚っつーのが定石だけど、
だけど、
その中に一人だけ、この世界の何処かにいてほしいと思い続けて密かに探してる人がいる。
多串さん(仮)だ。
名前は知らないからテキトーにつけた。……あ、いっぱい刺されたいとかそういう意味じゃ
なくて……あ、多串さんがいっぱい刺したいならいいんだけど……あ、刺すって刀じゃないから。
刀は刀でも股間の刀的な感じで……何の話してたんだっけ?
そうそう、多串さんはいてほしいなって話。
俺に似たオッサンと一緒に戦っていた年上の男。天パのオッサンより年上っぽい感じだったけど
多串さんはオッサンじゃなかった。オジサマ?……ちょっと違うな。多串さんは年上なんだけど
そういうダンディな感じじゃなくて、チャンバラごっこしてるガキみたいに戦いを楽しんでいる
ような人だ。お堅い職業っぽい制服着てたのに変なヤツと思って見てたら、いつの間にか目が
離せなくなっていた。
今でも、俺に似たオッサンを俺に置き換えて、共闘するところを想像しただけでドキドキ。
ついでに戦いが終わった後のこともイロイロ想像して……
何処の誰かも分からない話したこともない人に何でここまでとは思うんだけど、気になっちゃった
もんはどうしようもならないらしい。
それに最近、多串さんが江戸にいる可能性も出てきたんだ。
対テロ特別武装警察真選組――とても物騒な肩書だが、詰まるところ地方にいた腕の立つヤツを
集めた警察組織だ。ヤツらが田舎侍と蔑まれようがチンピラ警察と揶揄されようが、そんなことは
どうでもよくて、問題はヤツらの制服が多串さんの着ていたものにそっくりなこと。
十年前戦場にいた多串さんと、最近組織された真選組にどう繋がりがあるのか分からないけれど、
あの時のヤツらはいきなり出てきていきなり消えたような連中だ。常識に囚われていたらいつまで
経っても見付けられない。
一度話して鼻で笑われて以来自分の中に押し込めている仮説がある――あれは未来の俺達の姿――
夢は寝て見ろだの頭の中までパーになっただのモテない野郎はこれだからだの散々な言われよう
だったが、多串さん達の制服が今になって出てきたということは、俺の説が正しかったということ
じゃないか?俺と多串さんは手を取り合って過去へ向かい、昔の俺を、つまりは二人の未来を助け
てやろうぜ的な?
……流石にタイムマシンはねーか。
けど、頑張って生きたらこんな幸せな未来が待ってるぜ的なことを神様的な人が見せてくれた的な
可能性は無きにしもあらず?
十年前の多串さんが何にせよ、重要なのは今の多串さんと俺が出会うこと。というわけで俺は、
町で真選組を見かけるたびに多串さんはいないか目を凝らす日々。屯所とかいうところに皆で
生活しているらしいが、そこを訪ねるわけにもいかねぇし、とにかく偶然会えるのを待った。
きっともう少しで会える――何故かは知らないが確信に近いものがあった。
そんな時、ヅラの策略により大使館爆破事件の犯人に仕立て上げられた。
イケダヤという宿に匿われていたものの真選組が突入。中心で指示を出してた人こそ多串さん
……のような感じがしたけれど、ここで捕まるわけにはいかずとりあえず逃げた。
くそっ……ヅラの野郎!俺と多串さんの運命の出会い(だと思う)を邪魔しやがって!
「オイ」
「ぬを!!」
後ろから呼ばれて振り返るのとほぼ同時、刀が迫ってきて慌てて避けた。
こん時はそれどころじゃなかったけど、後から考えたら、敵相手に声かける必要ないよな。
警察とテロリストであったとしても後ろから攻撃するなんて卑怯な真似できないってか?
「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ、楽しもうや」
「オイオイおめーホントに役人か」
面接で瞳孔がいざという時きらめくとか緩い態度を装いつつ、己の心臓に落ち着けと指令を出す。
今目の前にいるのは、テロリスト逮捕を「喧嘩」なんぞと宣っちまう血気盛んな男は、まさしく
多串さんその人……のように見えるのは気のせいじゃないよな?多串さんに会いたい思いが募り
過ぎて誰でも多串さんに見えるようになっちまったんじゃないよな?何せ十年も待ったもんだから
疑い深くなっていけねェや。
「土方さん危ないですぜ」
多串さんっぽい人と対峙した瞬間、バズーカが撃ち込まれ近くの部屋に逃げ込んだ。
ヅラのバカが爆弾なんか持ち出すから阻止する。多串さんみたいな人が死んだらどうすんだ!
誰が何と言おうと俺は俺の護りたいもんを、多串さんとの運命の出会い(かもしれない)を
護ってやるゥゥゥゥゥ!
さっきのヤツ、歳は俺と同じか少し下か?記憶の中の多串さんより大分若いが、でも似てた。
今まで年上と付き合うことばかり考えていたけど、年下の男の子ってのもアリだな。喧嘩っ早い
やんちゃ坊主を大人の余裕で包み込む的な?
となるとアッチの方も俺主導だな。経験不足の多串さん……いや、多串くんを俺が優しく手取り
足取り腰取り……寝てるだけで天国に連れてってくれる多串さんもいいけど、こんなの初めて、
なんて悶える多串くんもいいな。
「銀ちゃん」
「?」
起爆スイッチを押したという神楽の「爆弾発言」で現実へ引き戻された。何してんだァァァァ!
で、何とか爆発物を処理したってのに俺はヅラの仲間として捕まっちまった。違うんだ多串くん!
ヅラは一応ダチだが俺はテロリストじゃねぇ!江戸の平和を願う気持ちはキミと同じなんだよ!!
……と弁解しようにも多串くんは取調べ担当ではなかった。一応、無罪放免となったけれどこれ、
多串くんの耳には入るの?次に会った時はもう、知り合いとして声かけていいの?脱獄してきたとか
思われないよね?大丈夫だよね?
しかし真選組と俺にそうそう接点があるはずもなく……つーか多串くんの本名ってなんだっけ?
部下っぽい子が名前を呼んでたような気がしたけど確か……何とかカタ?いや……ヒザだったか?
あん時は会えた衝撃で周りのことまで気にかけるゆとりが無かったものな〜。
「つーわけでヅラ、お前は俺に斬りかかってきたイケメンお巡りさんについて調べておくよーに」
「ヅラじゃない桂だ。というか何を言っているのだ銀時」
刑務所の面会室。大きな硝子に隔たれたこちらとあちらで俺はヅラと対面する。
「遂に多串さんに出会えたんだよ!あ、多串さんじゃなくて多串くんだったんだけど」
「だから何を言っているのだ銀時」
「いただろ?俺に刀向けてきた瞳孔開き気味の、触るもの皆傷付けるぜ的なオーラを纏いつつ、
小さなボケも拾って律儀にツッコミ入れてたお巡りさん」
「ソイツを調べてどうするのだ」
「お近付きになりたい」
「ふざけるな!」
カウンターを両手で叩き声を荒げるヅラ。つーか、話すために開いてる小さい穴から唾が飛んで
来たんだけど!汚ェな……
「ヤツらは腑抜けた幕府に飼われる狗だぞ!」
「職業なんかどうでもいいんだよ。俺は多串くんと仲良くなりてーの」
「女にモテず男に走るまではまあいい……」
「違う。俺はモテモテだけど多串さんのために敢えて全部断ってきたんだ」
「目を覚ませ銀時!真選組など所詮にわか侍の集まりだ!」
役に立たねぇヅラだ……友達の恋を応援しようって優しさはねーのかよ。
「そこの見張りの人ー、真選組に詳しい?」
「は?」
「歳と背丈は俺と同じくらいで瞳孔開いててカタとかヒザとかって名前の人知らない?
制服からして隊長だと思うんだけど」
「……土方か?」
「あー、そうそう!ヒジカタくん!確かそんな名前だった」
「土方だと!?ソイツだけはやめておけ!」
鬼のフクチョーだか何だかと喚く言葉は聞かなかった。名前が分かればそれでいい。これで俄然
会いやすくなった。次こそ本当の運命の出会いを演出だ!待ってろよ、多串くん改めヒジカタくん。
(13.08.12)
映画派生話という名の馴れ初め話です。改変未来の人達を攘夷時代の四人は見た訳で、白夜叉の初恋が土方さんだったらいいなという妄想*^^*
続きはなるべく早くアップしたいと思いますので少々お待ち下さいませ。
追記:続きはこちら。15禁です。→★