※第四百二十四訓その後を妄想した話です。
※カップリングはリバです。

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攘夷浪士に転職しようか――そこそこ本気で考えてしまうくらいムカつく天人に出会った。
天人というか……天刀(あまんとう)か?



土方十四郎VSクサナギ



「銃刀法違反で一人しょっぴいて来やした。取調べお願いしまーす。……ほら、とっとと入って」
「ちょっと待て」

奇跡的に仕事をしたらしい総悟だがやはり詰めが甘い。連行したら即、取調室だろーが。
こんな所まで連れてくるんじゃねーよ……。一先ず重要書類を伏せて入口の総悟に向かう。

「取調べも自分でやれ。部屋は空いてんだろ?」
「本当に俺が調べてもいいんで?」
「あ?……なっ!」

意味深なことを言う総悟に若干イラついていると、その後ろから手錠を嵌めた万事屋が顔を
覗かせた。

「一応、情状酌量の余地があるかどうか土方さんに調べてもらってからと思ってたんですけどねィ」
「チッ……分かった。取調べは俺がやっとくから得物も寄越せ」
「え?土方さん、二刀流になるんですか?今更そんなキャラ付けしたって出番は増えませんぜ」
「違ェよ!コイツから押収した得物のことだ!」
「ああ、それなら旦那のケツに刺さったままです」
「……は?」
「なんで、公然猥褻の取調べもお願いしまーす」

訳の分からないことを言い残し、総悟は行ってしまった。万事屋のケツがどうしたって?
とにかくコイツが持ってるんだな?
気不味いのか襖に半身を隠したままの万事屋に刀を寄越せと言えば「抜けない」と返って来た。

「抜かなくていいから鞘ごと寄越せ」
「いやあの……俺が鞘になっちゃってて……」
「あ?何でもいいからとにかく中に入れ」
「…………」

漸く観念したのか、それでもおずおずと万事屋が部屋に入る。俺の正面に立ったまま
座ろうともしない万事屋。大抵のことなら屁理屈捏ねて自分は悪くないと居直るものを……
今回はマジで何か仕出かしたのか?

「とりあえず座れ」
「いやっ……今とても座れる状態では……」
「じゃあ立ったままでいいから何やらかしたか話せ」
「……笑わない?」
「あ?」
「笑わないと約束できるなら話してやる」
「何で偉そうなんだよ。テメー、自分の立場分かってんのか?」
「いいから何があっても笑わないと約束しろ!」
「分かったよ。……笑わないから話せ」
「じっ実は、こんな感じになってまして……」

体を半分捻った万事屋のケツから伸びる柄を目にした瞬間、咥えていた煙草を落としそうになった。

「俺の仕事が忙しいからって……」

何やってんだコイツは……ハァと息を吐き出してやれば「違ェよ」と枷の嵌った両手が脳天に
降ってくる。

「バカですかお前は!ていうかバカだろ!バカ決定!!」
「痛ェな……公務執行妨害も加えてやろうか?」

さっきまでの殊勝な態度はどこへやら。俺に向かってバカバカと繰り返す。

「ケツに刀刺して遊んでるヤツに言われたかねーよ」
「だからバカだ、つってんだよ!何が悲しゅうて自分のケツに刀刺さなきゃなんねーんだよ!」
「あん?つーことは浮気かコラ!」
「違ェよバカ!刀が勝手に刺さって来たんだよ!」
「どうせ吐くならもっと上手い嘘を……」
「だから違ェって言ってんだろ!コレはな、刀に見えるが刀じゃねェ。刀型の天人なんだよ!」
「は?」
「……ってことで、コイツはコイツの意思で俺に刺さってんの。おいクサナギ!何か言えよ!」

万事屋は刀に向かって叫ぶ。……この刀が天人?それが本当だとして、万事屋の話からすると
その天人はきちんと意思を持っていて今ここにいる。つまり……

「やっぱり浮気じゃねェかコノヤロー!!」
「テメー、何を聞いてた!コイツが勝手に刺さったんだよ!クサナギ!オメーからも説明しろ!」
「…………」

刀はうんともすんとも言わない。……実はただの刀なんじゃねェか?

「事と次第によっちゃあ許してやるから正直に話してみろ」
「だから本当なんだって!……ちょっとそれ貸せ」
「あ、おい……」

俺から煙草を奪い、万事屋はケツの刀にそれを押し付けた。

「熱ィィィィ!!何さらすんじゃボケェェェェェ!!あっ……」

柄の先に目のようなものが出現し、刀が喋りだす。

「わし、エクスカリバー星のクサナギ言います。どうぞよろしゅうな、警察の兄(あん)ちゃん」
「……は?」
「ほら見ろ謝れ。疑ってすいませんでした銀時様って謝れ!」

何故か得意げな万事屋とは対照的に、俺は目の前の光景を理解しようと必死だった。

万事屋が刀の所持でしょっぴかれて、その刀が天人で、ソイツが万事屋のケツに刺さってて、
喋ってて、意思を持ってて……つまり、この刀は自ら万事屋のケツに刺さっていると……万事屋の
ケツに刺さっていたいと……好き好んで万事屋のケツに…………

「っざけんなこの刀野郎!!」
「痛い痛い痛い!」

思い切り刀を引いてみたものの万事屋が痛がるだけでびくともしない。

「万事屋テメー、こんな時にまで締まりの良さを発揮してんじゃねーよ!」
「バカかお前は!引っ張って抜けるなら自分で抜いてるっつーの!」
「警察の兄ちゃん……この兄ちゃんはな、わしの『つがい』なんじゃ。せっかく見付けた鞘を
奪わんといてェな」
「どういうことだ万事屋テメー……」
「本当の鞘が見付かるまで、この兄ちゃんはわしにカラダを捧げると誓ってくれたんじゃ」
「カラダ……だと?どういうことだ万事屋テメー!!」
「そういう意味じゃねーよバカ!コイツが勝手に取り憑いてんだよ!」
「取り憑くって兄ちゃん、わし悪霊やないで」
「うっせぇ!悪霊よりも質が悪いわァァァァ!!」
「万事屋……もしかしてお前、変な天人に着き纏われて迷惑してんのか?」
「そうだよ!やっと分かったかバカ!」

……最後のバカは余計なんじゃないだろうか。
まあとにかく困っているようだから何とかしてやんねェとな……俺は新しい煙草に火を付けて
クサナギに近付く。

「目ェ潰されたくなかったら出ろ」
「えええええっ!ちょっ……兄ちゃんホンマに警察か!?ヤクザの論理やでそれ!」
「るせェ。そこは俺の鞘なんだよ」
「あああああ……睫毛!睫毛焦げてるて!分かった!分かったからちょっと離れよう。
逃げたりせぇへんから、なっ!」

むしろ万事屋を置いて逃げてくれた方がいいのだが(立場上、個人的感情で天人を攻撃する
わけにはいかない)仕方なく煙草を咥えてクサナギから遠ざけてやった。

「兄ちゃんの鞘とは知らず勝手に使うて悪かった。けど安心しぃや。白髪の兄ちゃん、刀の方は
まだ残っとる。今度は兄ちゃんが鞘になればいいだけの話……」
「ソイツの刀も鞘も俺のモンなんだよ!」
「兄ちゃんそれは欲張りっちゅーもんじゃ」

聞くだけ無駄だった……俺は再び煙草を刀の目の前へ。

「ああああ……待って!兄ちゃん、早まったらアカン!ホンマのこと言うとな、わし、全裸で
徘徊するのが嫌なだけやねん!この年で全裸はきっついねん!」
「全裸?」
「そう!鞘のない刀は全裸も同然なんや。そんな格好で人前には出られへん!」
「チッ……じゃあ俺の鞘貸してやるからそっちに移れ」
「ホンマか?兄ちゃんええ人やなァ……ほな、後ろ向いてくれるか?」
「おいやめろ土方!お前のケツじゃ耐えられねぇ……」
「そっちの鞘じゃねーよ!」

脇に置いていた村麻紗を抜き、鞘を刀野郎に向ける。

「そんな面白味のない鞘なんかよりこの兄ちゃんの方がナンボかマシ……ゲッホ!ゴッホ!」

刀の目に向かって煙を吹きかけ、無言で鞘を差し出す。……もう話す気も失せた。

「怖いわ〜。この兄ちゃん、ごっつ怖いわ〜。分かった分かった、そっちに入ったったら
ええんやろ……あー、怖っ……」

やっとのことで刀野郎は俺の持つ鞘に納まった。手間掛けさせやがって。

「……で、コイツは星に送り返してやりゃぁいいのか?」
「いや、お相手の鞘を探してるんだと……」
「チッ……じゃあ暫くはこのままか」
「それがな、沖田くんの鞘がそうなんだとよ」
「早く言えよ!……おいクサナギ、鞘の持ち主ここに呼んでやるから交渉はテメーでやれ」

俺が総悟に譲ってもらうなんて形になれば後々何を言われるか……

「あ〜……もういいわ。なんか面倒になってきたでござる」
「は?」
「おいコイツ、トッシーに侵されてんぞ!語尾が『ござる』だ」
「大人しくなって丁度いいじゃねーか」
「いやいや、そのうちきっと『鞘たん萌え〜』とか言い出すぜ」
「テメーに付き纏わなきゃそれでいい」
「……なにお前、マジで刀に妬いてたわけ?」
「妬いてねーよバカ」
「照れるな照れるな……。銀さんの刀も鞘も土方くんのモンだから安心して〜」
「チッ……」

刀野郎のせいで余計なことを口走っちまった……。ニヤニヤと締まりのない顔で万事屋が
後ろから抱き付いてきた。胸の前に回った手で枷を嵌めたままだったと気付き、外してやる。

「どうも。……ところでー、土方くんの刀と鞘はお元気ですか〜?」
「……そうでもねぇな」
「あらら可哀想に……仕事のしすぎじゃね?」
「そうかもな」
「じゃあ元気になるマッサージしてあげようか?」
「……あと一時間待て」
「はーい」
「もしもしキミ達、拙者の存在を忘れていないかい?」
「「黙れ!」」

俺から離れた万事屋はクサナギを手に総悟の居場所を尋ねた。

「多分、その辺で昼寝してる」
「了解〜」

部屋を出ていく万事屋の後姿を何とはなしに見ていると、クサナギに付けられた着物の裂け目が
否応なしに目に入る。チッ……やはりへし折ってやればよかった。

そんなことを考えながら、俺は一時間で仕事を終えるべく筆を取った。

(12.11.29)


最近の銀さんは色々突っ込まれ過ぎじゃないですか。ていうかそんなエロシーンを少 年漫画で掲載していいんですか。モザイクいらないんですか^^;
そんなわけで、続き(425訓)を読むまでは銀さんの刀が土方さんの鞘に納まったり、土方さんの刀が 銀さんの鞘に納まったりするのを妄想して過ごそうと思います。
……あ、いつものことだった。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。  


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