銀さん教えてレッスン19」及び「カップリングなりきり100の質問〜教えて編〜」の続きです。








非番前夜のこの日、十四郎は銀時と食事をしてからホテルに行く約束をしていて、
待ち合わせ場所の屋台でおでんをつつきながら恋人の到着を待っていた。

「銀さぁ〜ん!!」
「離せ!俺ァこれから大事な用が……あ、十四郎〜!」
「……よう」

時間ちょうどに現れた銀時は何故か猿飛あやめを伴っており、十四郎は無言で竹輪麩に箸を
突き刺した。銀時はその静かな嫉妬には敢えて気付かぬふりをして、十四郎のすぐ隣、肩が
触れ合うほど近くに腰を下ろす。

「遅くなってごめんねー」

本当は抱きしめてキスをして、俺にはお前だけだと言ってやりたい。けれど特別警察の幹部という
十四郎の立場上、二人の仲は関係者のみに知らせていること。外ではこれが精一杯。

「別に遅くはねぇよ」
「私ならいつまで待たされても平気よ銀さんっ!」
「お前もう帰れよ」

しっしと犬を追い払う仕種で邪険にしても「もっと蔑んで」と堪える様子もないあやめ。
威嚇のために銀時が木刀を振れば、忍の反射神経でひらりとかわす。その様子を十四郎はただ
黙って見ていた。

「この剣が届く範囲は俺の国だから勝手に入って来んな」
「いいわ銀さん!その木刀でぶってちょうだい!さあ早く!!」
「ふざけんな!俺の洞爺湖はSMの道具じゃねーぞ!」
「なら縛ればいいじゃない!分かったわ!自分で縛るわよっ!」

懐から縄を取り出してあっという間に自身を亀甲縛りにしたあやめに、銀時はもう構うのを
やめようと決意する。

「無視して飲もうぜ……」
「お、おう……」

カウンターの下、誰からも見えないようにそっと十四郎の腿に手を置けば、十四郎は頬を朱に
染めつつ猪口を呷った。
今日もお疲れ様――にこりと笑いかけて銀時は自身の猪口を十四郎のそれにかちゃ、と当てる。
その間もあやめは、放置プレイが始まったと一人喜びに打ち震えていた。



銀さん教えてSM編



「俺はMだと思うか?」
「……はい?」

ストーカー忍者を何とか巻いて行きつけのホテルにやって来た銀時と十四郎。聞きたいことが
あると、えらく神妙な面持ちで言った十四郎をとりあえずソファーに座らせて、銀時もその隣へ。
そこでなされた質問が先の台詞である。

「十四郎が、Mかどうか……?」
「ああ。……分かるか?」
「えっとー……」

銀時は言葉に詰まった。もちろん答が分からないのではない。緊縛プレイや快楽責めが好きな
十四郎は紛うことなくMだと思う。だがしかし、それをそのまま伝えることが正解なのかどうかが
分からないのだ。

自分はMだと知った十四郎にどぎついSMプレイでも強請られたら……それに応える自信が今の
銀時にはなかった。
自称ドSの銀時は十四郎と付き合う中でその認識が誤りであったと気付いた。
愛する人を傷付けたくはない。苦しめたくはない。一緒に気持ち良くなりたい――たまにからかう
ようなことを言ってしまうことは今でもあるけれど、十四郎が求めない限り拘束プレイはやらなく
なっていた。それなのにここで認めたら……

知識のある者からない者に分け与えることが教育だと思っていた。しかし、ことはそう単純なもの
ではなかったと思い知る銀時。
教えるって何ですか――空を見つめて銀時は亡き恩師に語りかけてみる。

「なあ銀時……分からねェか?」
「あ、ごめんごめん」

こんなことで先生を頼ってどうする。俺自身の力で十四郎と向き合わなければ!
決意も新たに銀時はまず、何故そう思ったのか尋ねてみた。

「始末屋を見てて何となくな。アイツはMなんだろ?」
「あ、ああうん。……とっ十四郎も、ああいう風にされたい、の?」

否定してほしいと祈りながら聞く。どんな趣味嗜好を持とうと十四郎は十四郎。そのくらいで
愛が冷めるとは思わないけれど、できれば「もっと蔑め」などと言う十四郎は見たくないと。

「あそこまで冷たくされたいとは思わねぇよ。ただ、セックスの時に縛られると気持ちいいのは、
Mだからなのかなと思っただけだ」
「なるほどー……うん、そうだね。どっちかっつーとMかもね」

彼女ほどではないと理解できているなら認めても平気そうだと銀時は判断する。
すると、拘束されて感度が上がる理由を以前から知りたがっていた十四郎は、自力で答が
導き出せたと誇らしげな様子。

「嬉しそうだね」
「ああ。謎が一つ解けたからな」
「そっか……じゃあ、ご褒美のチュウ」
「ん」

軽く唇を触れ合わせ、銀時は十四郎の肩を抱いた。
そうか、自分はMだったのか。言われてみれば、銀時に態と恥ずかしいことを言わされた時も
嫌だとは思いつつ、しかし結局とても気持ち良くなっていたではないか。そうか、自分は――

「なあ銀時……」
「ん?」

両腕を銀時の腰に巻いて肩に凭れつつ、視線を安物の絨毯に落として聞く。
予想外に暗いその声に銀時は目を瞬かせた。

「Mなヤツは好きか?」
「十四郎……?」

銀時の位置では十四郎の表情を窺うことができないものの、縋るように掴まれた後身頃から
その気持ちは痛いほど伝わってきた。
「謎」が解けたと喜んだのも束の間、銀時に迷惑行為を働く女と自分が同じ種類の人間だと
気付き沈んでいるのだ。自分は彼女ほどMに徹することはできない。嫌われることを楽しめる
彼女ほどには……

「俺はね……」

艶やかな黒髪を指で梳きつつ銀時は言う。

「十四郎が好きなんだよ。SでもMでも関係ない」
「銀時……」

十四郎に語りかけながら、銀時は自身にも言い聞かせていた。
思い返すと、元々自分と「土方」とは気など合わない間柄であった。初対面の印象は最悪で、
会えば大抵ケンカして――そんな関係だったはずだ。
だから性嗜好が合わなくたって大丈夫。自分達はそれを補える程の愛で結ばれているのだから。

もう一度、今度はしっかりと唇を重ね合わせてから、二人はベッドへ向かった。

(13.04.13)


久しぶりの教えてシリーズ、十四郎は遂に自分がMだと気付きました(笑)。後編は18禁となります。アップまで少々お待ち下さいませ。

追記:続きはこちら(注意書きに飛びます)