冬の帰り道


よく晴れた冬の日。午前中から買い物に出た三人が、其れ其れに大きな袋を抱えての帰り道。
先頭を行く神楽は足を踏み鳴らして上機嫌である。

「この辺、サクサクするネ!」
「霜柱って言うんだよ」

地中の水分が凍ってできた氷柱は、踏み締める度にさくっと小気味よい音を立てて割れる。
それが楽しくて神楽は霜柱のある辺りを行ったり来たり。残された二人は暫くの間、微笑ましく
見守っていたのだが、なかなか前へ進もうとしない神楽に新八が焦れた。

「神楽ちゃん、早く帰ろうよ」
「もうちょっと……」
「銀さん、風邪ひいてるんだから早く帰らないと可哀相だよ」
「もうちょっとサクサクしたら帰るアル」
「まったくもう……」

仕方ないなと息を吐き、新八はちらりと隣の様子を伺い見た。すると神楽は、

「こんな寒い日に布団剥いだ銀ちゃんが悪いネ」

と言いつつ、その足は徐々に万事屋へ向かう。
銀時の話によると、今朝起きた時には一枚も布団を掛けていなかったそうだ。

昨夜は土方を呼んで四人と一匹の晩餐だった。その後、神楽と定春は新八と共に志村家へ向かい
恋人同士の時間を作ってやり、朝食はまた全員揃って、というのがいつものパターンなのだが、
今朝は銀時が熱を出し、食欲がないと言ったのだ。

「どうせ、久しぶりにイチャイチャできたのが嬉しくてそのまま寝ちゃったんでしょ」
「は、ははははは……」

久しぶりにイチャイチャしたであろう当人の前で申し訳ないと思いつつ、神楽の言うとおりだとも
思っている新八は笑うしかなかった。そして、

「買い出し、付き合わせてしまってすみません……土方さん」
「いや……」

何とかフォローを入れた新八であったが、土方は気まずげに視線を逸らしてしまう。
それというのも昨夜、寝ている銀時の布団を剥いだのは自分だったのだから。
明け方、銀時のくしゃみで目を覚まし、慌てて布団を戻したが時既に遅し。
ちょっとした仕返しのつもりだった。寒さですぐ起きるだろうとも思っていたのに……

踏み出した草履の下から聞こえた霜柱の音に土方は、やり過ぎたと密かに後悔する。
お詫びに帰ったら、銀時の好きな小豆を入れて粥を作ろう。小正月はとうに過ぎたけれど、
この先銀時が健康に過ごせることを祈って。

(12.01.29)


短いですがここで切ります。そういえば最近、霜柱って見ないなァ……土の上を歩く機会がないからか、温かくなったからか……
続き……というか、銀さんが布団を奪われた理由については「おまけ」で書きます。夜の出来事なんでね、もちろん18禁です。
本編の雰囲気をぶち壊す感じにしたいなァ……なんて^^; それでもOK!な18歳以上の方は、アップまで少々お待ち下さいませ。

追記:おまけはこちら