銀時と土方が初めて結ばれた次の朝、足のふらつく土方を銀時はスクーターの後部座席へ乗せて
宿泊したホテルから屯所へ向かった。

「銀さん、もうここで……」
「ダメ!ちゃんと送ってくから。」

手前で下ろしてほしいという土方の訴えを退け、銀時は屯所までスクーターを走らせた。



銀さん教えてレッスン12.5



「あ、あの銀さん……?」

屯所の門前にスクーターを停めると、銀時も下りて土方の腰に手を添える。
戸惑う土方に銀時は「部屋まで送るよ」とニッコリ微笑んだ。

「そこまでしなくて大丈夫だから……」
「俺がしたいの。お願い!」
「う、ん……」

両手を合わせて頼みこまれ、土方は渋々銀時と共に屯所へ入っていった。

「お、お帰りなさい副長……」
「おう。」
「お邪魔します。」

すれ違う名も知らぬ隊士達にも、銀時はいつもより丁寧に振舞う。

「副長、お帰りなさい。」
「おう。」
「……何で旦那がいるんですか?」
「山崎、これはな……」
「お邪魔します。部屋まで送り届けたらすぐ帰るから。」
「そ、うですか……」

敵意を露わにしたにもかかわらず穏やかに返され、山崎はそれ以上言う事が出来なくなってしまう。
そして改めて二人を見て、纏う空気がこれまでと変わっていることに気付き、更には日頃より
歩みの遅い土方を前にして、銀時がここにいる理由を悟るのだった。

「し、失礼します!!」
「山崎!?」

山崎は二人に背を向けて駆け出していった。

「どうしたんだ、山崎のヤツ……」
「あー……仕事中に喋ってると、鬼の副長さんにどやされると思ったんじゃない?」
「にしたって、いきなり走って逃げるヤツがあるかよ。」
「まあまあ。」

山崎の真意が分かる銀時は、土方を宥めて部屋へ誘導していく。


*  *  *  *  *


「昨日はゴメンね。初めてなのに、いっぱいシちゃって……」
「銀さん……」

部屋に入り襖を閉めると、銀時は労わるように土方を抱き締めた。

「あの……本当に大丈夫だから。」
「今日はゆっくり休んでね。あっ、布団敷こうか?」
「えっ!」

質問の形でなされた提案であったが、土方の返答を待たずに銀時は押し入れを開けて布団を
敷き始める。

「別に怪我したわけじゃねェのに、大袈裟だな……」
「でも腰、辛いでしょ?」
「ちょっと、疲れてるだけだ。」
「うん。疲れてる時は休むのが一番だよ。……はい。」

ポンポンと布団を叩いて横になるよう促され、土方は布団に仰向けになった。
そこへ銀時は掛け布団をそっと掛ける。

「じゃあ俺は帰るけど、ゆっくり休むんだよ。……緊急事態以外、仕事しちゃダメだからね。」
「はいはい。」

部屋を後にする銀時へ布団の中から手を振って、土方は静かに目を閉じた。

(銀さん、すげぇ優しい……。たまにはこういうのも、いいもんだな。)

昨夜の疲労もあり、ほどなくして土方は眠りに就いた。



その頃銀時は、局長室を訪ねていた。

「よっ。」
「おお、珍しいな。お前がここへ来るなんて……。トシは一緒じゃないのか?」

急な来訪にも嫌な顔ひとつせず、近藤は銀時を招き入れる。

「一緒だった。……送ってきたんだ。」
「そうか。いや〜、上手くいってるようで羨ましい限りだな!」
「それでよ……今、アイツ寝てるから、できればそっとしといてほしいんだけど……」

放っておくとひと眠りした後に働きかねないと思い、銀時は近藤へ協力を求めに来たのだった。

「ん?トシは具合でも悪いのか?」
「そうじゃなくて……昨日、ちょっと、無理させちまって……」
「飲み比べでもしたのか?」
「いや、その〜、宿で、ちょっと……」
「宿?……あっ!そ、そうか!遂にトシと結ばれたんだな!?」
「ま、まあな。」
「ありがとう万事屋!よくぞ何も知らないトシをここまで……」

銀時の肩をバシバシ叩いて激励する近藤の目には、薄っすらと涙が浮かんでいた。

「トシを大切にしてくれよ。」
「最初からしてるって。」
「そうだったな!よし、分かった。トシは俺が責任持って休ませよう!」
「サンキュー。……あっ、それと、このこと十四郎には……」
「分かってる。口が裂けても言わん!」
「ん。……それじゃあ。」
「おう。任せてくれ!」

拳でドンと胸を叩いた近藤にもう一度礼を言い、銀時は玄関へ向かった。



「…………」

玄関を出た銀時を待ち構えていたのは、沖田・山崎他、これまで二人の仲を邪魔してきた隊士達。

「……なに?俺、もう帰るとこだけど?」

ケンカ腰にならぬよう、銀時はいつもの気怠さを心掛けながら話をする。

「副長のこと……お願いします。」
「えっ?」
「お願いします。」
「お願いします!」

涙を堪え、何とか声を絞り出してそう言って、隊士達は屯所の奥へ入っていく。
袖で目元を拭いながら隊士達は皆、銀時の横を走り抜けていった。

最後に残ったのは沖田と山崎。
長い沈黙の後、山崎がすぅっと息を吸い込み口を開いた。

「副長を泣かせたりしたら、タダじゃ済みませんからね。」
「ああ。」
「必ず……幸せにして下さいよ。」
「ああ。」
「つっても、旦那はドSだからねィ。」
「沖田くん……」

言葉とは裏腹に、沖田の表情は堅い。

「土方さんに嫌がらせすんのは、俺の役目なんで。」
「うん。ちゃんと優しくするから、安心してよ。」
「絶対……絶対ですよ!?」
「ああ。」
「いらなくなったら、いつでも引き取りに行きやすんで。」
「一生手放すつもりはねェよ。」
「そうですかィ……」

再び沈黙の時が流れ、次に口を開いたのは銀時であった。

「ありがとね、二人とも。それと、さっきいたヤツらにも言っといて。」
「認めたわけじゃありませんよ!」
「今のところは、ってだけでィ。」
「はいはい……そんじゃあね。」


右手を着流しへ差し入れ、左手をひらりと上げ、銀時は二人の間を通り帰路へついた。



*  *  *  *  *



その日の夜、屯所の夕食に赤飯が出された。赤飯以外はいつもと代わり映えせぬ献立に
隊士達は皆一様に首を傾げつつ食卓につく。土方もその一人であった。
近藤の隣に座り、自分の食事をマヨネーズ塗れにしながら疑問を口にする。

「何で赤飯なんだろうな。」
「ああ、それは万事屋と、あっ!いや、その……小豆が、安かったから。」

赤飯の張本人である近藤はつい口を滑らせそうになり、慌てて誤魔化した。
けれど一部の―土方に懸想している―隊士達が気付くのには「万事屋」の一言で充分であったし
土方にも、何か隠していることくらいは分かってしまう。

「近藤さん、本当のことを言ってくれ。」
「本当だって!本当に小豆が大安売りでな……」
「万事屋って言い掛けてたじゃねーか。」
「あ、だからそれは……万事屋から、安売りのことを聞いたんだ!」
「それで、わざわざ近藤さんが買って来たってのか?」
「そ、そうだ!」
「本当に〜?」
「ほ、本当だ!」

二人の「初めて」を祝って、などと言えるはずもなく、近藤は冷や汗を流しながら小豆の安売りで
押し通し続ける。

「どーせアンタは全部黄色くすんだから、赤でも白でも一緒でしょう?」
「総悟!」

二人の向かいに座った沖田の言葉で土方の追求が逸れる。近藤に助け舟を出したようにも思えた
沖田であったが、赤飯にこれでもかと七味唐辛子を塗していた。

「ちょっ、総悟!?それ七味!!胡麻塩じゃねーぞ!!」
「大丈夫でさァ、近藤さん……ちゃんと胡麻も入ってますぜィ。」
「いや、そうだけども……」
「隊長、終わったら俺にも貸して下さい。」
「おう。」
「ザキ!?えっ、なに?赤飯に七味かけんの、流行ってんの?」
「そうでさァ。何もめでたくねー時に赤飯食うと赤飯の神様が怒るんで、そうならないために
赤飯を唐辛子で赤くして赤々飯にする必要があるんです。」
「せっ赤々飯?」
「はい。そうすることで、これは祝いの赤飯ではなく単なる食事であることを、赤飯の神様に
アピールするわけです。……さあ、近藤さんもどうぞ。」
「いや、俺は……」

密かに(?)土方と銀時とのことを祝ってやりたかった近藤は、自分の茶碗に七味唐辛子が
かけられるのを拒む。その思いを知った上でぶち壊したい沖田は、七味唐辛子の容器を握り締め
近藤の赤飯も台無しにするチャンスを虎視眈々と狙う。

「おい総悟、近藤さんに妙なことを吹き込むんじゃねェ。……何が赤々飯だ。」
「因みに土方さんもマヨ塗れの黄赤飯にしてるんで、祝いの赤飯じゃありやせん。」
「何だと!?あ、いや……まあ、今日はただの食事だしな……ハハッ……」
「何なんだ一体……?」


近藤が残念そうに笑う理由も、沖田が得意気な表情を浮かべる理由も分からず、土方は赤飯の
マヨネーズ掛けを食すのだった。


(11.08.07)


前話(レッスン12)をアップした際「祝いに赤飯を」というコメントをいただきまして、近藤さんにこっそり(?)祝ってもらいました。

そして今回をもって銀土の二人は屯所内でも「一応」公認の仲になりました。……まあ、土方さんは「付き合ってることを皆が知ってる」程度だと思ってますけど。

次からは二人のラブラブでエロエロなお付き合いが始まります……って、最初からそうでしたね^^;

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

追記:続き、書きました。

 

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